 
古いモノを大切にするのに、新しいモノも発信しているイギリスという国に魅かれて、幾度となく渡英を繰り返し、蚤の市などで、少しずつアンティークを買って集めることがたまらなく楽しかったある日のことです。ロンドンの、のみの市で購入した、アンティーク缶の蓋を開けると缶の中からボタンが2つ出てきました。その瞬間、ぱあーっと子供の頃の記憶が蘇ってきたのです。
それは、祖母や母が洋服から取っておいた、ビスケット缶にいっぱい入ったボタンを宝石を眺めるような気持ちで覗いていた、幼い頃の記憶でした。
その2日後、不思議な事が起こりました。たまたま、立ち寄ったアンティークショップでお店の人が、"あなたに、これあげる"と、唐突に何個かのボタンをくれたのです。私は、その店の馴染みでもなく、少し戸惑いながらも、手のひらに置かれたボタンを見てみると、先日のアンティーク缶の中から出てきたボタンと全く同じものだったのです。調べてみると、1930年代頃のボタンでした。70年も前のボタンが全部で7個。とても、不思議な気持ちでした。そして、同時に強くボタンが気になり始めた瞬間となりました。
 
ヨーロッパの上流階級では、庶民がボタンを使うようになる何百年も前から、金・銀・宝石で装飾された美しいボタンを身に付けていました。ボタンホールのない、紐で締めるドレスにも、装飾用の美しいボタンが付いている事からも、ボタンが装飾品として、大きな意味を持っていた事が分かります。時代のファッションリーダー的存在であった、貴族の衣装とボタンの美しさには、思わず溜息がでてしまいます。本当にボタンは小さな芸術品なのだなぁ・・・と思います。
19世紀から20世紀の初頭にかけて作られた、手工芸品的なボタンにも、本当にたくさんの素材が使われています。ヤシの実・貝・木・革・角・骨などの自然素材、ガラスにメタル。後にプラスティックの時代へと入っていきますが、プラスティックと一口に言っても、ルーサイト・ベークライト・セルロイド・・・と色んな種類があります。手作業でカットされたボタンやハンドペイントのボタンなどは、思わず、顔がほころんでしまう様な、素朴なかわいさがあります。
 
私は、アンティークボタンは、想像や創造の力を与えてくれるものだと思っています。何十年、何百年前のファッションを想像しながら、またはボタン職人の作業を想像しながら見るボタンは、さらに興味深いものになりますし、それらのボタンを現代において、どのように使うかを創造していくことは、とても楽しい事だと思います。
洋服のボタンを付け替えるだけでも、洋服の印象は、全く違うものになりますし、ハンドメイドの材料として使えば、素敵なアクセサリーなどにも生まれ変わります。額に入れて絵の代わりに飾るのも、楽しいですね。手を少し加えるだけで、より楽しむ事が出来るのも、アンティークボタンの魅力です。アンティークの世界の中で、一番色んな楽しみ方ができるのも、意外とボタンかも知れませんね。
ボタンの世界も知れば知るほど、奥深い世界ですが、まだ、手ごろな価格で手に入る19世紀後期以降のボタンは、手軽に楽しめる、アンティークとしても、オススメです。思わず、顔がほころんでしまうようなボタン。その作りに感心して、見入ってしまうようなボタン。想像・創造の世界を楽しめるボタン。そんなボタンを皆さんに、是非、見ていただきたいと思っています。
小さな小さなボタンですが、あなたの一番の宝物になるかもしれません。
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