■不思議の森の中へ ( )内はフランス語
キャメルは、だんだん先へ進むにつれ、心臓の鼓動が高鳴って、ドキンドキンという音が耳もとまで鳴り響いてきました。
そっと周りを見渡すと、秋でもないのに美しい色のきのこが生えていたり、
それに少し先の太い木の枝には、不思議なくらいまっ白なふくろうが、キャメルをじっと見つめていました。
「あのふくろうのそばを通り過ぎると、何かがおこりそうで怖いわ。ねぇ、ピッポどうすればいいの?」とキャメルはピッポに話しかけましたが、ピッポも怖いのか、
まるで人形(プーペ)のようにじっとして、黙ったまましっかりと、キャメルの肩先につかまっていました。キャメルはおそるおそる太い木の枝に止まっているふくろうのそばまで近付いてきました。キャメルの心臓の鼓動はますます高鳴り、破裂しそうになりました。
と、その時、「何しに来たんだい?」という声がキャメルの頭の上から聞こえました。もう何がなんだか分からなくなったキャメルは、「きゃー」と叫びながら、不思議の森の中の方へ走っていきました。そして、しばらくして立ち止まって後ろを振り向くと、さっきの白いふくろうが、太い木の枝に止まったまま、後ろにくるっと首を回して、
キャメルの方をじっと大きな目で見つめて「ホッホー怖い森へようこそ」と喋りました。
「ふくろうが、人の言葉で話しているわ。やっぱりここは不思議(ミステール)。でも、ふくろうはたしか怖い森って言ってたわ。どうしようかしら?でも後戻りは出来ないわ。絶対コルマールへ行かなきゃ」とキャメルは勇気をふりしぼっておそるおそる歩きながら、森の中へ進んでいきました。ピッポはずっとキャメルの肩先に止まったままで、動こうとしませんでした。周りを見渡すと、森はしんみりとして、木々の葉っぱが青々としげっていて人っこ一人居る様子もありませんでした。
すると、いきなり目の前に青い人影が現れました。「きゃー青いお化け」とキャメルはびっくりして叫びました。そしてピッポもびっくりしてキャメルの後ろに隠れました。
すると、その青いお化けらしき人影は「シャラシャラ」と言ってすっと消えてしまいました。「きっと森のお化けよ。だって透き通るようにきれいな色だったもの。今にも心臓が破裂しそうだわ。やっぱりこの森へ来たのが間違いだったのよ。」とキャメルは後ろを振り返って、ひきかえそうとしました「でもたしかシャラシャラって言ってたわね何の事?」とキャメルが言うと、後ろから笑い声が聞こえました。またもやびっくりして振り向くと、何と不思議の森の中へと続く道は川に変わっていて、足もとを見るとキャメルは大きな岩の上に立っていました。
そして、キャメルの立っている場所は、ちょうど川の真ん中だったのでした。
「どうしよう、前も後ろも川になってしまって、身動きとれないわピッポ」とキャメルは言うと岩の上に座り込んでしまいました。
すると、川の流れに乗ってすいすいと大きなハートの葉っぱが流れてきました。そして次々と、何枚ものハートの葉っぱが流れてきて、再び「ニコニコ笑ってごらん」という声がしました。「だれなの?」とキャメルは言いながら、こわごわ辺りを見回しました。
すると、森のてっぺんの方から「あなたの近くにいるわ。ここよ」と美しい声がして、「花びらの妖精だよ。君の名前は?」と低い声が聞こえました。
キャメルが上を見上げると、森のてっぺんから、ピンクとブルーのハートの形をしたちょうちょのような妖精が二人舞い降りてきて、ハートの葉っぱの上に降り立ちました。
そして、二人の花びらの妖精はニコニコしながらキャメルの方を見ました。
「私の名前はキャメルだけど、おかしいわ、花びらが口をきくなんて。それに、私楽しくないの。だからニコニコなんか出来るわけないでしょ。だって、私一人ぼっちだし」とキャメルが言うと、ブルーの花びらの妖精がキャメルに言いました。
「これから始まるんだよ。だれだって一人ぼっちから始まるんだ。これから君が歩く道は、君がつくるお話なんだよ。だから、キャメル、これから先出会う人を大切にすれば、きっと楽しい道が開けるよ」すると次に、ピンクの妖精が言いました。
「さぁ、ハートの葉っぱの小舟に乗っていきなさい。きっとあなたの行きたい所へいけるわ。ても、決して泣いたりしてはいけませんよ」と言うと、二人の花びらの妖精は、すいすいと川の流れに乗って、先へいってしまいました。
「うそだわ、葉っぱになんか乗ったら沈んじゃうわ。でも、何となく葉っぱがハートのカードに見えて、さそっているように流れてくるわ。ちょっと試しに乗ってみようかしら」とキャメルは言うと、バスケットをしっかり握りしめて、おもいきって葉っぱに飛び乗りました。ピッポは一生懸命キャメルの肩にしがみついていました。
「あら、沈まないわ、不思議だわ。それに、とてもいい気分」とキャメルはニコニコしながら言いました。そして、キャメルを乗せた葉っぱの小舟は、すいすいと川の流れに乗って流れていきました。
「きっとコルマールまで乗せていってくれるんだわ。歩かなくていいからとても楽だわ。それになんてきれいな森なの」とキャメルは言うと、ゆっくり腰を降ろして、うっとりと周りの景色に見とれていました。
周りの森の木々はピンク(ロズ)や、あお(ブルー)や、オレンジ(オランジュ)の色をしていて、まるで夢を見ているような景色でした。
しばらくいくと、ブルーの木に、ブルーの色のりんごの形をしたブルーの木の実が沢山成っていました。そして、その木の実は、トルコ石のようなとても鮮やかな美しい色をしていました。「きれいなりんご!木の実?りんご(ポム)?」とキャメルは言うと、急に涙ぐんでしまいました。
そうです。キャメルはリクヴィールの村のりんご園を思い出したのでした。
そして、キャメルのこぼれ落ちた大つぶの涙のせいで、葉っぱの小舟はぶくぶくと沈んでしまいました。「あっ、おぼれてしまう!」と、キャメルはあわててバスケットを持ち上げて泳ごうとしました。そして足を力一杯伸ばして、蹴り上げようとしました。
すると川底にすぐ足が着いて、しかも立ちあがってみると、川底はひざより少し上くらいの深さで、思ったより浅い川でした。
「なあんだ、こんなに浅かったなんて知らなかったわ」とキャメルはびっくりしました。
そして、ちょっと強気になったキャメルは「そうだわ、あそこにあるブルーの木の実を取りたいわ」と言って、りんごにそっくりのブルーの木の実目指して向こう岸まで、水をかき分け、まるで水と戯れるような音をたてながら、川の中を歩いていきました。
その時、ピッポがそっと、スカートの端をくわえて持ち上げてくれたのでした。すると、森の中を風が優しく吹いて、「ほら、キャメル、一人ぼっちじゃないでしょ」って森の木の葉が囁きました。
それからキャメルは地面に這い上がると、ブルーの木の近くまでいって見上げました。
「あんな高い所に木の実があるなんて」と、キャメルは困った顔をして言いました。
すると、いきなり一個のブルーの木の実が「虹(アルカンスィエル)」と言いながら、ふんわりと落ちてきました。キャメルはぼんやりと木の実を見ながら、しっかりとブルーの木の実を両手で受け取りました。そして「虹?」とキャメルは言いながら、木の実をポケットに入れたのでした。気が付くと、ピッポが一生懸命キャメルの肩先をつっついていました。「すっかり、りんごに見とれてぼんやりしてしまったわ。早く道を探しましょう。コルマールへ続く道があるはずよ」とキャメルは言うと、ピッポを頭にのせてバスケットを元気よく持ち上げ、森の中を歩いていきました。そのキャメルの後ろ姿には、たくましく生きる少女の力が感じられました。その時、森の草木が優しく揺れて「キャメルえらいね、少し強くなったね。でも、もっともっと大切な事があるんだよ」って囁きました。
「大切な事って何かしら?でも、ほんとにきれいな森ね」とキャメルは目を細めながら、森の木々を眺めて歩きました。
木の枝には、白い毛にグレーの縞模様のリスが走り回っていたり、それからキャメルは「かわいい!ピンク(ロズ)の熊だわ」と木の穴に、ロズ熊の親子を見つけて
「ねぇ、コルマールへいく道はどっちか知らない?」とロズ熊親子に聞いたりしてみましたが、ロズ熊親子はびっくりして目を丸くしてキャメルを見つめるばかりで、その内に、穴の外へ出てどこかへ逃げていってしまいました。
しばらく歩いていると、何やらぶつぶつ言い争っている声が聞こえてきました。
「だれかいるんだわ。よかった!」と、キャメルはほっとした表情をして、急いで声のする方へ歩いていきました。すると、一本の道筋に出ました。そしてその道の遠くの方を見ると道の真ん中で二人が言い争っているのが見えました。キャメルはその二人のいる方へ走っていきました。そして「あのー」と、声をかけようとしましたが、思わずびっくりして、両手で口をふさいでしまいました。
なんと、そこにいたのはキャメルが今まで見た事がない姿、形をした人(ペルソンヌ)が二人立っていたのでした。




さあ、キャメルの目の前に、どんな姿のペルソンヌが現れたのでしょうね。お楽しみに。

▼妖精プルグリムとお菓子の国
Vol.1「キャメルと小さな木組みの家」
Vol.2「とても悲しい出来事と不思議の森」
Vol.3「不思議の森の中へ」
Vol.4「不思議の森の住人トリーアングルペルソンヌと、こわい森」
Vol.5「こわい森と、森の妖精プルグリム」
Vol.6「不思議の森からコルマールの町へ」
Vol.7「虹の向こうへ〜はじめての町コルマール」
Vol.8「美しいコルマールの町」
Vol.9「マシュマロの形をした弟アルベルト」
Vol.10「空へ飛んでいった生クリーム」

第一話「妖精プルグリムの森」は全国の書店にて好評発売中。

好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。
四六判・上製・72頁 定価1,365円(税込)
■ ブックサービス(送料210円でお届け。)
フリーダイヤル/0120-29-9625
携帯・PHS/03-3817-0711
■ インターネット
「yahoo」のショッピングか等からもご注文頂けます。

※全国書店発売ですが、初版の為冊数が少ないので、インターネットや、ブックサービスなどがおすすめです。(すべての書店で注文可)大阪では「住之江水嶋書房」「ヤマハ心斎橋書籍」宮崎では「田中書店」などが多く冊数有ります。

☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
文芸社http://www.bungeisha.co.jp/search/detail.php?bid=21973
東京都新宿区新宿1-10-1 TEL.03-5369-2299 FAX.03-5369-3066

BACKHOME
Copyright © 2008 by CountryFan, All rights reserved.