■不思議の森の住人トリーアングルペルソンヌと、こわい森 ( )内はフランス語 不思議の森の中で、キャメルは、今までに見た事もない姿、形の人間と出会いました。 なんと、そこには、三角の形をした人(トリーアングルペルソンヌ)が二人立っていたのでした。そして、その二人はピタッと言い争いを止めると、三角(トリーアングル)の目でギロッとキャメルの方へ視線を向けました。 「きゃー、やっぱり不思議(ミステール)だわ、だれなの?」と、キャメルは思わず叫びました。「そっちこそ何しに来たんだい?まったく迷惑な話だよ。ぼくたち、ブツブツ交換しているんだよ、じゃましないでくれよ。それとも、君も仲間になるのかい?」と、グリーン(ヴェール)の三角人(トリーアングルペルソンヌ)がキャメルに言いました。 「ブツブツ交換って何なの?」と、キャメルが問いかけると、今度はピンク(ロズ)の、トリーアングルペルソンヌが、三角の口をして言いました。 「それはお互いがブツブツ言い争う事よ。ブツブツ言ってると、なんだか気持ちがすーっとするのよ、だから、ブツブツ交換して遊んでいるの。そういえば、あんたもブツブツ言いたそうな顔してるね、一緒に遊ぶ?」 「私、ブツブツ言いたそうな顔している?」とキャメルが尋ねると、再びピンク(ロズ)のトリーアングルペルソンヌが言いました。「そうだね、あんた楽しそうじゃないもの。楽しくなかったら、私達みたいにさ、この森に住んで、ブツブツ大好きトリーアングルペルソンヌになっちゃいなよ。私達二人姉弟なんだけどさ、この森の近くの村に住んでいたんだよ。でも、ある時から二人ぼっちになっちゃってね、笑えなくて寂しいから、この森へきたんだよ。三角(トリーアングル)の形になって、少々不便だけどさ、この森にいると寂しくないんだよ」とピンク(ロズ)のトリーアングルペルソンヌは言いました。 「寂しいから言い争うなんて、よけい寂しくなるわ。あなたたちは、それでいかもしれないけど、私は絶対負けないわ。たとえ、一人でも、強く生きていくの。だから、ここに住むわけにはいかないわ。それに、三角(トリーアングル)の形になるなんていやよ、たとえ楽しそうな顔をしていなくても、私はふつうの人間の方がいいわ。じゃあ、さようなら」と、キャメルは少し怒った顔をしながら言うと、さっさと歩いていきました。 すると、ピッポがしきりに、キャメルの髪の毛をつっきはじめました。「何なの?ピッポ、あんな訳の分からない姉弟なんかほっとけばいいのよ」と、キャメルはプリプリと怒りながらピッポに言いました。その内に、ピッポはキャメルの髪の毛だけでなく、ほっぺたもつっつきはじめました。「いいかげんにしてピッポ」と、キャメルはピッポにどなりました。 そして、「なんだか、少し目が三角になってきたような気がするわ」とキャメルはブツブツ言いながら歩いていました。すると、ピッポは次に、キャメルの頭をつっつきはじめました。「もう、あんたもトリーアングルペルソンヌになりたいの?」とキャメルが言った瞬間、林の中から泣き声が聞こえてきました。「きゃー何なの?ピッポがさっきからつっついていたけど、この事だったのね。ピッポ、不気味よね泣き声なんて」と、キャメルはピッポに言いました。ピッポは「ピッポー」と小さな声で返事をして、キャメルの肩先に止まり、動こうとしませんでした。 それからキャメルとピッポは、道の真ん中につっ立ったまま人形(プーペ)のように、固まったまま動けなくなり、じっとして、泣き声に耳を傾けていました。 その内に、泣き声は林の中からだんだんこちらへ向かって聞こえてきました。そして、いきなり泣き声の正体が、キャメルの目の前に姿を現しました。「きゃー何なの?」と、キャメルはびっくりして、腰をぬかして座り込んでしまいました。ピッポもガタガタ震えてキャメルの肩先にしがみついていました。よく見ると、トリーアングルペルソンヌの親子でした。 トリーアングルペルソンヌの子供は、キャメルの顔を見るとピタッと泣くを止めました。「まあ、可愛いぼうや!トリーアングルペルソンヌの子供だわ、どうしたの?」とキャメルは、トリーアングルペルソンヌぼうやの頭をなでようと手を差し出しました。すると、ぼうやの頭は毛が三本立っていて、それはとても堅くてなでられませんでした。「じゃあ、だっこしてあげるわ」とキャメルが抱きかかえようとしても、三角(トリーアングル)なので、手がすべったり角があたったりして、思うようにだっこできませんでした。すると、「私達にかまわないでちょうだい。私、お料理、洗濯、育児なんて大嫌いなの」と、トリーアングルペルソンヌの母親は、プリプリ怒りながら言いました。そして、トリーアングルペルソンヌぼうやの手を引いて、道の向かい側の林の方へ歩いていきました。「あっ、ちょっと待って、コルマールへいきたいの、この道のどっちの方向がコルマールか知らない?」キャメルが問いかけましたが、何の返答もなく、トリーアングルペルソンヌの親子は急ぎ足で、林の中へ入っていきました。「どうして、トリーアングルペルソンヌって泣いたり怒ったりしているのかしら?きっと、そうする事が大好きなんだわ。私は絶対、泣いたり怒ったりしないわよ」と、キャメルは強気になって言うと、無理にニコニコしてみました。そして、「後戻りすると、トリーアングルペルソンヌ姉弟に又会う事になるわ、先を進んでいくしかないわ。きっとこっちの方向がコルマールよ」と言いながら、道を歩いていきました。すると、道の遠くの真ん中に、飾りの付いたクリスマスツリーがぽつんと一本立っていました。 「やっぱりニコニコするといい事があるもんだわ。不思議の森のお祭りかしら?綺麗なツリーがあるわ」とキャメルは言うと、ツリーのそばまでかけ寄りました。そして「今、確か春(プランタン)?クリスマス(ノエル)?」と言いながら、ツリーのそばに近寄って、しきりにツリーの飾りを手で触りました。「まあ、いろんな飾りがあるわ。これは卵だわ!そういえば、村の(注)パックのお祭りを思い出すわね」と、キャメルは言いながら、ゆったりと腰を降ろしてツリーの木にもたれました。「そういえば小さい頃おばあちゃんが言ってたわ、そんなに泣いてブツブツ言うと、トリーアングルの目になっちゃうよって。本当だったのね、トリーアングルペルソンヌって、この不思議の森に住んでいたんだわ」と、キャメルは眠たそうな目をしながら目を細めて言うと、いつのまにかツリーの木のそばで、スヤスヤと眠ってしまいました。ピッポもキャメルの肩先に止まったままコックリコックリしながら眠ってしまいました。しばらくキャメルはスヤスヤと眠りながら、夢を見ていました。 すると、夢の中で「ザワザワ」という音がして、その内に体がゆらゆらと揺り動かされました。「きゃー」とキャメルはびっくりして飛び起きました。よく見ると、夢の中ではなく、クリスマスツリーが動き出して、キャメルの体がゆらゆらと動かされていたのでした。ピッポもびっくりして、キャメルの回りを「ピッポピッポ」と飛び回りました。そして、そのクリスマスツリーは、すくっと上に伸びて、下から足が見えました。そして、くるっと回って、二つの三角の目でキャメルの方を見つめているではありませんか!「きゃーツリーに目があるわ!そして、手や足も!」キャメルが言うと、ツリーは喋りはじめました。「あーあ、せっかくいい気分で寝ていたのに、君が起こしたのかい?迷惑な話だよ」とよく見ると、トリーアングルペルソンヌのじいさんでした。「そっちこそ迷惑よ、せっかくうとうととしていたのに」とキャメルがいうと、「ほら、君もトリーアングルの仲間になりかけているよ」とトリーアングルペルソンヌじいさんは言いました。「えっ、嘘よ、トリーアングルになるわけないわ」とキャメルがいうと「そこの水たまりで、自分の顔を映してごらんよ」と、トリーアングルペルソンヌじいさんは言いました。キャメルはそっと、道の脇にある水たまりの近くに寄って、自分の顔を水たまりに映して見てみました。「きゃー本当に頬が三角になっているわ」とキャメルはびっくりして叫びながら、道を走っていきました。ピッポも必死にキャメルの後から付いて飛んでいきました。すると、キャメルの後から、森の入り口で見たあの青いお化けが、追いかけてきました。「きゃー助けて」とキャメルは、いちもくさんに走り出しました。 その内に、森はだんだん薄暗くなってきて、いつの間にか、もとの深い緑色の森になっていました。 そして、緑の木々は、風もないのにゆらゆら揺れ出して「ゴーゴー」と、低い地なりのような音がしました。 キャメルはあまりの怖さに立ち止まり、うずくまってしまいました。そして、ピッポはキャメルのコートの中にうずくまりました。 すると、何処からか、木の枝がスルスルとキャメルの方へ伸びてきて、キャメルのバスケットを象の鼻のようにすくい上げました。そして、その枝の木の幹を見ると、大きな木がギラリとした大きな二つの目でバスケットを見つめて大きな口を開けていました。「何するの?バスケットを返して!」とキャメルは叫びました。すると、どうした事でしょう!キャメルにしがみついていたピッポが勢いよく木の幹の方へ飛んでいきました。そしてピッポは、大きな木の幹を口ばしでつっつきはじめました。「ピッポ、すごいわ!」と、キャメルは突然の出来事におどろいて、信じられない様子で言いました。そして、キャメルは自分も一生懸命バスケットを取り戻そうとして手を上に伸ばしました。
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▼妖精プルグリムとお菓子の国 Vol.1「キャメルと小さな木組みの家」 Vol.2「とても悲しい出来事と不思議の森」 Vol.3「不思議の森の中へ」 Vol.4「不思議の森の住人トリーアングルペルソンヌと、こわい森」 Vol.5「こわい森と、森の妖精プルグリム」 Vol.6「不思議の森からコルマールの町へ」 Vol.7「虹の向こうへ〜はじめての町コルマール」 Vol.8「美しいコルマールの町」 Vol.9「マシュマロの形をした弟アルベルト」 Vol.10「空へ飛んでいった生クリーム」 第一話「妖精プルグリムの森」は全国の書店にて好評発売中。