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■こわい森と、森の妖精プルグリム ( )内はフランス語
「私、もう少しで枝に掛かったバスケットを取り返してみせるわ」と、キャメルはピッポに向かって言うと、手を上に伸ばしてバスケットをつかもうとしました。すると、木の枝は再びスルスルと動き出しました。
そして、大きな木の幹はギラリとした目でバスケットを見つめて、大きな口をまんまるく開きました。
「お願い!そのバスケットの中には、大切な地図や食べ物が入っているの。返して!」とキャメルは、大きな声で木に向かって叫びましたが、大きな木はキャメルの声など耳にせず、とうとうバスケットを、ひと飲みに飲み込んでしまいました。そして、大きな木は鋭い目つきでキャメルを見つめると、いきなりキャメルめがけて歩いてくるではありませんか!「ピッポ助けてー!」「木が歩いてくるわ、きっと私まで食べるつもりよ!」とキャメルは叫びました。そして、こわくなって体が固まって動けなくなり、立ちすくんでしまいました。すると、どうした事でしょう!木の幹を一生懸命つっついていたピッポが、パタパタとキャメルの方へ飛んできて、キャメルの目の前に立ちはだかるように、小さな羽根を力一杯広げて、力強く、まるで、大きな鷲が飛び立つような羽根音をたてながら大きな木をにらみつけました。
そうです。ピッポは大きな木にいかくして、キャメルを木から一生懸命守ろうとしたのでした。その時、キャメルの目にピッポの後ろ姿がとても大きな懐かしい人影に写りました。そして、その後ろ姿は包み込むような優しい背中に見えて、キャメルは一瞬自分の目を疑いました。その時、幼い頃の事を思い出したキャメルは「あなたは?」と言いかけましたが、それは一瞬の出来事だったので、すぐにその大きな人の姿は消えてしまいました。
そしてよく見ると、ピッポは木の枝につかまってしまっていて、キャメルが助けようとする間もなく、ピッポは、大きな木の口の中にポイッと放り込まれてしまいました。そして、大きな木はゴックンとピッポもひと飲みに飲み込んでしまったのでした。すると、再び大きな木はギラリとした目でキャメルを見つめました。そして、枝をキャメルめがけてスルスルと伸ばしはじめました。「次は、私を飲み込むつもりだわ」と、キャメルは震えながら心の中で叫ぶと、必死にその場を逃れようと、森の中を走り出しました。
すると、後ろからドスンドスンと大きな木が追い掛けてくるではありませんか!キャメルは、もっと必死になって走り出しました。
大きな木は、キャメルが一生懸命走り出すと、いっそう早く追い掛けてきました。キャメルは、あまりにも早く走り過ぎて、力尽きて地面にバタンと、うつぶせに倒れてしまいました。すると、だんだん後ろからドスンドスンと大きな木が、キャメルに近付いてくるのが聞こえてきました。そして、大きな木がドスンドスンと地面を踏みしめるたびに、地面が揺れ動いて、キャメルは体中に振動が伝わってくるのを感じました。その内に、足音と振動はだんだん大きく響いてきて、キャメルのすぐ近くまで迫ってきました。「もうだめだわ!」と、キャメルは心の中で叫びました。そして、その足音と大きな振動は、キャメルのすぐ後ろで、いきなりピタッと止まりました。キャメルは心臓が押しつぶされそうになりました。そして、身動きが取れず、うつぶせになったままじっとしていました。キャメルは心の中で、木に飲み込まれるのを覚悟しました。すると、どうした事でしょう!大きな木は立ち止まったまま動かなくなり、そして「ムシャムシャ」と、何か食べているような物音が後ろでしました。
「痛くはないけど、きっと私の足をかじっている音だわ」とキャメルは、地面にうつぶせになって倒れ込んだまま、顔を地面に伏せて様子をうかがっていました。すると、小さい頃の記憶にある、幼い頃のキャメルとそっくりの声が聞こえました。
「オイシイデスカ?」キャメルは、そっと顔を上げて後ろを振り返ってみました。そこにはなんと、自分にそっくりな可愛い羽根の付いた天使が立っていました。そして、その小さな天使は、ニコニコしながら大きな木に草を食べさせているではありませんか!「あんなにこわい大きな木がすっかりおとなしくなっているわ!そして、あの羽根のある天使から貰った草をムシャムシャと食べているわ!」と、キャメルはびっくりしながらその様子を見て呟きました。そして、「あなた誰なの?」と、天使に尋ねました。
「ワタシキャメルデスヨ。ツマリ、キャメルノテンシデス。ダレデモ、ココロノナカニテンシガスンデイルノデス」と天使は答えました。
「あなたは、私なんでしょ、だったら、あなたは何故その木と仲良く出来るの?私にはそんな事出来ないわ」とキャメルは涙ぐんで言いました。
「アノネ、ハジメカラコワイトカ、イヤダナンテオモッテイルト、オトモダチニナレナイデスヨ」と天使は言いました。「だって、木はピッポもバスケットも食べてしまったのよ。私から何もかも奪ったのは、その木なのよ」と、キャメルは泣きじゃくりながら言いました。すると、「キャメルガ、タイヨウニナレバ、ミンナアカルクヤサシクナルヨ、ソシテワタシモ、オオキクナレルヨ」と天使は言うと、すっと消えてしまいました。
キャメルは、ぼんやりと「太陽になるって?」と呟きました。すると、今度は暗闇の中から青いお化けが現れて、キャメルめがけてフワフワと追い掛けてきました。
キャメルは必死になって逃げようと立ちあがって、薄暗い森の中へと走り去りましたが、その内に、再び力尽きて地面に這いつくばってしまいました。「どうしてなの?青いお化けまで追い掛けてくるなんて、ひどいわ!この森はお化けが住む森よ。私から大切な物をみんな奪ってしまって、私までもこの森に食べられてしまうんだわ。もうおしまいよ。なんて不幸なの?」と、キャメルは悲しみのどん底につきおとされてしまったような気持ちになって、だんだん意識が薄れていくのを感じました。そして、地面にうずくまっていると、かすかに優しい声が聞こえてきました。「(ポム)りんご(ポム)りんご」「(ポム)りんご?」とキャメルは、うつろな目をしながら言うと、そっと起き上がって振り返りました。すると、そこには、今しがたキャメルを追い掛けていた青いお化けがすっと立っていて、優しい目でキャメルを見つめていました。
そして、青いお化けは、首を傾げて「ポム」とキャメルに優しく囁きました。
「そうだわ!(ポム)りんごだわ!」とキャメルは言うと、急いでポケットの中にある青いりんご(ポム)を取り出して、一気にガブリガブリと、全部食べました。
すると、どうでしょう!三角にとがっていたキャメルの頬は、だんだんふっくらと膨らんできました。「とってもおいしい、幸せな気持ちになるわ!それに、頬が丸くなったみたい」とキャメルは、そっと頬を両手で撫でてみました。「元に戻っているわ!そうだわ、この(ポム)りんごを、トリーアングルの人達にも食べさせてあげれば、きっとトリーアングルの人達は幸せになれるわ!」とキャメルは思わず叫びました。すると、森は暗い夜からだんだん光りが差して明るくなり、木々の間から虹が見えてきました。「虹!そうだわ!このりんご(ポム)が落ちる時、虹っていう声が聞こえたわ、この事だったのね。そして、そうだわ!お化けさん、あなたが言ってた「シャラシャラ」は、川の事で、川の流れに乗っていきなさいって教えてくれていたんだわ!だとすると、お化けさん、あなたもしかして神様なの?」とキャメルは青いお化けに尋ねました。
すると青いお化けは、だんだん小さくなって、小さな妖精の姿に変わりました。「なんて可愛いんでしょう!妖精だったのね。そういえば、リクヴィールの村の人達が噂していたわ、森で、ばったり小さな妖精プルグリムに出会った人は、幸せに暮らせるって。あなたもしかしてプルグリムなの?」とキャメルが言うと、その小さな妖精は、首を縦に振ってうなづきました。
さぁ、森の妖精プルグリムに出会ったキャメルは、無事にコルマールへ行く事が出来るのでしょうか? お楽しみに。
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