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■不思議の森からコルマールの町へ ( )内はフランス語
「私ね、キャメルっていうの。あなたに会えるなんて感激だわ」とキャメルが言うと、「君、りんご(ポム)を食べて随分変わったね」と、プルグリムは言いました。
すると、キャメルは目を輝かせて言いました。「そうね、りんご(ポム)を食べて気が付いたわ。私、おばあちゃんが亡くなって一人ぼっちでこわくて、自分を守る事ばかり考えていたわ。一人ぼっちなんて、周りに沢山いるのよね」すると、プルグリムはくるくるっとした目で、キャメルを見上げて言いました。「そうだよ、大きな木も薄暗い森の中に一人ぼっちで一生懸命自分を守ろうとして、こわい木になっていたんだよ。誰かが、太陽のように暖かな手を差し伸べれば、生き物は優しく変わるんだよ」キャメルは、プルグリムの真剣な眼差しを受け止めると、突然思い出したように、手の平を合わせて力強く言いました。「そうだわ!太陽になるってそういう事なのね。みんなが仲間になって力を合わせれば、きっと、大きな力になるわよね。リクヴィールの村だって豊になればいいわね(注)」
そして、キャメルは大空を見上げて、太陽をまぶしそうに見ながら言いました。「今まで、自分の事ばかり考えていた自分が、恥ずかしく思えるわ。ただ生きているだけでも、こんなに嬉しい!とても太陽が暖かく感じるわ。これからは、もっと楽しく生きていくの。それは、私の出来る力で、周りの人達を喜ばせてあげる事よ。幸せに生きるって、行動する事だって分かったの」
「キャメル、随分成長したね!そうだよ、自分に執着しすぎると、人はだめになっていくんだ。人の為になる事を考えるようにすると、自分も成長して悩みなんか吹き飛んじゃうよ。今すぐ行動する事だよ。自分の出来る力で人々が喜んでくれるなんて、これ以上の幸せはないよ。自分の出来る力なんて、誰でもよーく考えればすぐみつかる事だよ。頑張るんだよキャメル」とプルグリムは言うと、ふんわりと空中に浮かんで、木の枝にちょこんと座りました。「まあ、可愛いわ。あなた空を飛べるの?」とキャメルは、ニッコリしながらプルグリムを見つめました。でも、キャメルは、急に何かを思い出したように寂しげな表情をしました。そして、「一つだけ聞いていい?」とキャメルはうつむいて、小さな声でプルグリムに尋ねました。「何だい?」とプルグリムは言うと、ふんわりと木の枝から降り立って、キャメルの前にきてキャメルの顔を見上げました。「私のバスケットとピッポは、もう戻ってこないわよね、魔法の力では無理なのね」と、キャメルがしょんぼり言うとプルグリムは両腕を前に組んで、真剣な顔つきで言いました。「もう終わった事は、どうにもならないよ。お話は先へ進んでいるんだから」と言うと、プルグリムは急に、両手を自分のイチゴのポケット(フレズポシュ)の中に入れて、何やら探し物をしている様子でした。
キャメルは、何がはじまるのかと思いながら、その様子にじっと見入っていました。すると、「やぁ、あったよ!」とプルグリムは言いながら、何やり、消しゴムくらいの小さな物を右手で取り出すと、キャメルに手渡しました。「何なの?お人形のバスケット?あっ、これ私のバスケットとそっくりだわ!」とキャメルが言うと、「それ、君のバスケットだよ。バスケットの中に、ピッポもいるはずさ」とプルグリムは言いました。「えっ、本当なの?」と、キャメルは、びっくりした顔をしながら、そっと、小さなバスケットの隙間から、バスケットの中を覗き込みました。「あっ、ピッポだわ!こんなに小さくなって!しかも、バスケットの中のパンを全部食べて、おなかが太っているわ!食べすぎたのね、よく眠っているわ!プルグリム、これ、どういう事なの?」とキャメルは、びっくりしてプルグリムに尋ねました。「実はね、大きな木は、バスケットとピッポを飲み込んだんだけど、あの大きな木の幹の中身は、底なしの空洞だったのさ。だから、君をドスンドスンて追い掛けている内に、バスケットとピッポは、木の幹の中を通りぬけて、そのまま地面に落ちたんだよ。それを、ぼくが拾って小さくして、ポイッて、このイチゴのポケット(フレズポシュ)に入れたんだよ」と、プルグリムは、ニコッとしながら言いました。「本当なの?無事でよかったわ。プルグリムありがとう。でも、もう、元どおりの大きさには戻らないの?」とキャメルが尋ねると、「大丈夫さ、行きたいとこへ着いたら、元に戻っているよ」とプルグリムは言いました。キャメルは、あらためて、喜びで胸がいっぱいになって、そして、大切そうにそのバスケットを、自分のポケットにしまい込みました。
それから、キャメルは、もう一つプルグリムに尋ねました。「私、コルマールへ行かなければいけないの、どの方向へ歩いていけばいいの?」すると、プルグリムは空を見上げました。「コルマールは、あの虹(アルカンスィエル)の向こうだよ」と、言いながら小さな指で虹(アルカンスィエル)を指差しました。「随分遠いのね、近道はないの?」とキャメルが尋ねると、「とっておきの方法があるさ」とプルグリムは言いながら、ふんわりと空中に浮かび上がり、キャメルの目の前に小さな手を差し出しました。「えっ、もしかして、空を飛ぶの?」とキャメルがびっくりして言うと、「そうさ、あの虹(アルカンスィエル)まで、僕が案内してあげるよ。僕の手をつないだら、君も空を飛べるんだよ。さあ、しっかり僕の手を握ってごらん」とプルグリムは言いました。「うそみたいだわ、空を飛ぶなんて!」と、キャメルは言いながら、そっと、プルグリムの小さな手に触れました。そして、しっかりとその小さな手を握りしめました。すると不思議な事に、キャメルもふんわりと空中に浮かんで、そして、プルグリムとキャメルは、一気に雲の高さまで上昇しました。
「すごいわ!信じられない!魔法の力ってすごいのね。鳥になった気分よ!」とキャメルは嬉しそうに、はじけそうな笑顔をしてはしゃぎました。プルグリムとキャメルの二人はふわふわの、わた菓子みたいな小さな雲の上までいくと、地上からはほど遠い高さの、空中に立っていました。「ここから、腹ばいになって手を伸ばせば、簡単に空を泳げるよ。ゆっくり、足で風をかきわけてごらんよ」とプルグリムは、キャメルに言いました。「大丈夫なの?」とキャメルは、不安な顔をしながらプルグリムに言いました。「大丈夫さ、ほら、ゆっくりだよ」とプルグリムは、キャメルの顔を優しく見つめながら、腹ばいになって足を上下に動かしはじめました。キャメルもゆっくりと、空中に腹這いになってみました。すると、簡単に空に体が浮いて、ゆっくりと足を上下に動かすと、まるで空の風が海の中の海水を、かきわけるように足に触れました。「まるで、空を泳いでいるみたいだわ!」と、キャメルは気持ちよさそうに、うっとりしながら、地上と平行に空の中を進みました。そして、キャメルが足を上下して進むたびに、スカートの裾や、コートの裾が天使の羽根のようにひるがえりました。それから、キャメルはゆっくりと、下に広がる景色を眺めました。そこには、まるで夢を見ているような、森の景色が飛び込んできました。「うぁーすごいわ!なんて綺麗なの!こわい森が、こんなに綺麗な緑色の森だったなんて信じられないわ!森の中の出来事がうそだったみたいだわ。きっと、どんな事でも、外から見るだけでは本当の中身なんて見えないものなのかもね」とキャメルはプルグリムに言いました。「そうさ、体験しながらいろんな物が見えてくるのさ。そして、成長して大人になるんだよ」とプルグリムは言いました。そして、「ほら、あれをごらんよ」と、プルグリムが指差しました。よく見ると、不思議の森で出会ったトリーアングルペルソンヌの姉弟が手をふっていました。「あっ、トリーアングルペルソンヌ姉弟が、元の人間に戻っているわ!きっと、青いりんご(ポム)を食べたのね」とキャメルは、とてもさわやかな表情をしながら言いました。プルグリムはキャメルの顔を見て、ほっとした表情をしながら「僕の手を離してももう大丈夫だよ。一人でも飛べるよ」と、キャメルに言いました。キャメルはプルグリムの手をそっと離してみました。「一人でも飛べるわ!」雲一つない大空の中に、プルグリムとキャメルの二人は、さわやかな恋人天使が寄り添うように飛んでいきました。
さわやかなプルグリムとキャメルの空の旅、楽しそうですね。さあ、二人の行く先には、どんなお話が待ち受けているのでしょうね。お楽しみに。
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