■美しいコルマールの町 ( )内はフランス語

プルグリムとキャメルは、ふんわりとゆっくり(注)コルマールの町へ降りていきました。
すると目の前には、運河が町の通りの中央を流れていました。そしてその運河には、可愛い橋がかかっていました。
「うわー運河だわ!運河が見えてきたわ!可愛い橋もあるわ!あの橋の事ね!おばあちゃんが言ってた橋!運河に掛かる可愛い橋の通りが、タヌール通りで、橋から見るコルマールの町は、目が覚めるように綺麗だって言ってたわ!」キャメルの目にはコルマールの町が、おとぎの国のように美しく広がって見えて、キャメルは感嘆の声を上げ続けていました。(注)

プルグリムとキャメルは、運河に掛かる可愛らしい橋に降り立ちました。キャメルは興奮した表情でプルグリムに言いました。「あのね。この橋を渡った通りに、私のお父さんが住んでいるって、おばあちゃんが言ってたわ!ほら、いろんな色の木組みの家が見えるでしょう。本当に目が覚めるように綺麗!」とキャメルは言いながら、橋の向こうに広がる街並をうっとりと眺めました。
でも、街並はちょっと、おかしな雰囲気が漂っていました。その事に気付いたキャメルは、不思議そうにプルグリムの顔を見て言いました。「おかしいわね。一人も道を歩いていないわ!それに、賑やかなはずの街並がひっそりとたたずんでいて、不気味だわ」するとプルグリムは、ふんわりと空中に浮いて、橋の欄干に立ちました。そして橋の向こうに見える街並を指差しました。「そうだね。きっとみんな教会へお祈りにでも出掛けているんだよ。ほら、あそこに教会の塔がみえるだろ。あそこで尋ねてごらんよ。きっと誰かいるよ」と言うと、プルグリムは再びふんわりとキャメルの目の前に降り立ちました。

■お別れと七色のキャンディー

それからキャメルの顔を見つめて優しく言いました。「ここで、もうお別れだよ。ここからは一人で頑張って進んでいくんだよ。そして、君は家族と巡り会って幸せに暮らすんだよ」キャメルは突然のプルグリムの言葉に衝撃を受けました。そしてドキドキした表情を隠すように、「もう会えないの?」と小さな声で下をうつむいて言いました。
「君が家族と一緒に、リクヴィールの村へ帰ったら、よく晴れた日に大空を見てごらん。きっと僕の姿が見えるよ。」とプルグリムは優しく言いました。
キャメルの心はだんだん寂しい気持ちでいっぱいになり、キャメルの目に涙があふれ出てきました。キャメルは一生懸命自分の気持ちを切り替えようとして「私、あなたに会った事、一生忘れないわ」と声を震わせながら言いました。
「キャメル、泣いちゃだめだよ!君はこれから家族を捜して、家族と仲良くリクヴィールの村へ帰っていくんだよ!そして村の人々と助け合って、村の暮らしが豊かになるように頑張るんだよ!太陽のように大きく、明るい気持ちを持って進むんだ!」とプルグリムは力強く言うと、イチゴのポケット(フレズポシュ)の中から、大きな七色のキャンディーを、手の平にのせてキャメルに差し出しました。
すると不思議!キャメルの顔がとても爽やかに輝き出しました。キャメルはニッコリ微笑んで、「まぁ、綺麗!魔法のキャンディー?このキャンディーを食べたら、きっと勇気が湧いてくるにちがいないわ!プルグリム、ありがとう!(メルスィ)もう一人でも大丈夫よ。そして約束するわ!家族と一緒に必ずリクヴィールの村を豊かで幸せな村にする事を約束する。」と言いながらキャメルは喜びいっぱいの笑顔で、七色のキャンディーを受け取りました。

プルグリムは安心した様子で「幸運を祈っているよ!(ボヌシャンス)」と言いながら、ふわふわと空中に浮き上がって、一気に雲の高さまで上昇すると、だんだん大空の中にすいこまれるように行ってしまって、姿が見えなくなりました。
キャメルは橋の上から、プルグリムの姿を追うように、いつまでも大空を見つめていました。でもしばらくして、手の平にしっかりと握りしめたキャンディーの事に気付くと、そっと手の平を開いて、キャンディーを口の中にそっと入れてみました。「おいしい!体中が幸せに包まれそう!やっぱり魔法のキャンディーだわ!だんだん勇気が湧いて強くなったような気がするわ」とキャメルは言うと、キャンディーをおいしそうに頬張りながら、運河に掛かる橋の上からコルマールの町を眺めました。「空の上から町がキラキラ輝いて見えたのは、きっとこの運河のせいね。コルマールの町なのね。コルマールに来たんだわ。きっと父さんや、母さんやアルベルトに会えるわ。きっとよ」と言うと、橋の向こうに見える教会の方へ歩いていきました。

■お菓子の人々

街並は甘いチョコや、バニラの匂いが漂っていてキャメルは幸せな気分で歩いていました。
「まるでお菓子の国へでも迷い込んだみたい!きっとおいしい菓子屋さんが、どこかに何軒もあるんだわ」とキャメルは、ひとり言を言いながら、やっと教会の門の所までたどり着きました。でも教会の扉は閉められたままで、ひっそりとして誰もいる様子はありませんでした。
「おかしいわ。誰もいないのかしら?」とキャメルは言いながら教会の扉を「コツコツ」とノックしました。でも中からは、何の応答もありませんでした。「やっぱり、教会へは誰もきてなさそうね。でももう一度、あの窓から覗いてみようかしら」とキャメルは言いながら、教会の窓の方へ近付いて、中を覗いてみました。すると教会の中から「ガタッ」と音がして、人影らしき物が見えました。「やっぱり誰かいるんだわ」とキャメルは言いながら、再び急いで扉の方へいき、扉をノックしようと手を扉の方へ差しのべましたが、ふと、教会の庭の隅に放り出されたように置かれたオルガンに、目が止まり、キャメルは不思議に思って、オルガンの方へ歩いていきました。
「オルガンだわ!雨に濡れたらどうするつもりかしら?」とキャメルは言いながらオルガンに近付き、右手で音を鳴らしてみました。「懐かしい音!小さい時アルベルトと一緒によくオルガンを弾いて遊んだわ」とキャメルは言いながら、オルガンの椅子に腰をかけると、アルザスのフォークダンスの曲を弾きはじめました。
するといきなり、教会の扉が「ギー」と開いて、教会の中からなんと人ではなく、お菓子のマシュマロの形をした人たちが出てきました。そして、マシュマロの形をした人たちは、それぞれ手を取り合って踊りだしたのでした。キャメルはオルガンに夢中になり、何も気付かず調子よくオルガンを弾き続けていました。
すると何処からともなく、ぞろぞろとマシュマロの形をした人たちが集まってきて、みんなで楽しそうに踊って、今度は声を出して歌いはじめました。キャメルはびっくりして立ちあがって振り返り、マシュマロの形をした人々に又もやびっくりして、「きゃー」と叫びました。「あなたたち、一体何者なの?」とキャメルが叫ぶと、一人のマシュマロの形をした人が言いました。「僕たちコルマール人なんだよ。何年が前に魔女がやってきて、コルマールの町を占領したんだよ。そして僕たちは、お菓子の大好きな魔女の為に魔女だけの為に働かされているのさ」「えっ、じゃあコルマールの人たちはみんな魔法をかけられてマシュマロの形にされたの?」とキャメルが尋ねると、コルマールの人たちは、みんな一斉に口々にがやがや喋りはじめました。「そうさ」「そうなのよ」「つらいのよ。魔女の洋服を作ったり、靴を作ったりして働かされているのよ」「こんなに歌ったり、踊ったりしたのは久しぶりだわ。だって音楽が大嫌いな魔女は、教会からオルガンを放り出したのよ」キャメルは真剣な顔をしてコルマールの人々の言う事に耳を傾けていました。
するとさっきのコルマール人がキャメルの前にきて言いました。「他の町や村から誰かやってきたら、姿を隠す事になっているんだよ。魔女の言い付けを守らなければ、僕たちはひどい目に合うんだよ」「ひどい(テリブル)話だわ!」とキャメルはぷりぷり怒りながら言いました。するとコルマールの可愛い子供たちがオルガンのそばにやってきて「ねぇ、ABCの歌(キラキラ星)弾いてよ」と口々に言いました。キャメルは気を取り直して「キラキラ星?そういえば小さい時にアルベルトとよく歌ったわ」と言いながら、キャメルは再びオルガンの椅子に腰をかけてキラキラ星を弾きはじめました。そしてコルマール人の子供たちは一生懸命大きな声で歌いはじめました。そしてその内にキャメルも一緒になって歌いはじめました。するとコルマールの大人たちも歌いはじめて大合唱になりました。
しばらくして、教会の外からコルマール人の子供がキャメルのそばに駆け寄ってきました。「おねえちゃん!おねえちゃんだろ!」とそのコルマール人の男の子はキャメルに向かって叫びました。
「誰なの?」とキャメルが尋ねると、その男の子は目にいっぱい涙を浮かべて言いました。「アルベルトだよ!懐かしい歌声が聞こえたから、駆け足でここへきたんだ。その歌声は昔歌った時のおねえちゃんの声だもん」「えっ、あなたが私の弟アルベルトなの?」とキャメルはびっくりして、そのコルマール人の男の子に近寄って尋ねました。するとそのコルマール人の男の子は、首を縦に振ってうなづきました。そして大声で泣きながらキャメルにしがみ付きました。「アルベルト!」キャメルはしっかりとアルベルトを抱きしめました。

さあ、やっと弟アルベルトに会えたキャメル。でも弟アルベルトは、魔女に魔法をかけられてお菓子のマシュマロの姿になっていました。一体これからキャメル一家はどうなっていくのでしょうね。次をお楽しみに。


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※コルマール
アルザス地方中央部の都市人口6万強 ストラスブールとスイスのバーゼルの中間に位置し、周囲には一面にブドウ畑が広がる。13世紀からワイン交易の拠点となり、運河を交通手段としていました。

※タヌール通り

コルマールの町の南側に、小ヴェニスを意味するプチットヴニーズがあります。
運河沿いに広がる街並は、目が覚めるほど美しく、運河に架かる橋を渡ると、すてきな一画を集めたような、コロンバージュ様式の建物が立ち並び、青や、ピンク、黄色に彩色された、おとぎの国のような家が続いています。その通りがタヌール通りなのです。

▼妖精プルグリムとお菓子の国
Vol.1「キャメルと小さな木組みの家」
Vol.2「とても悲しい出来事と不思議の森」
Vol.3「不思議の森の中へ」
Vol.4「不思議の森の住人トリーアングルペルソンヌと、こわい森」
Vol.5「こわい森と、森の妖精プルグリム」
Vol.6「不思議の森からコルマールの町へ」
Vol.7「虹の向こうへ〜はじめての町コルマール」
Vol.8「美しいコルマールの町」
Vol.9「マシュマロの形をした弟アルベルト」
Vol.10「空へ飛んでいった生クリーム」

第一話「妖精プルグリムの森」は全国の書店にて好評発売中。

好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。
四六判・上製・72頁 定価1,365円(税込)
■ ブックサービス(送料210円でお届け。)
フリーダイヤル/0120-29-9625
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■ インターネット
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※全国書店発売ですが、初版の為冊数が少ないので、インターネットや、ブックサービスなどがおすすめです。(すべての書店で注文可)大阪では「住之江水嶋書房」「ヤマハ心斎橋書籍」宮崎では「田中書店」などが多く冊数有ります。

☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
文芸社http://www.bungeisha.co.jp/search/detail.php?bid=21973
東京都新宿区新宿1-10-1 TEL.03-5369-2299 FAX.03-5369-3066

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