■マシュマロの形をした弟アルベルト

コルマールで一番美しい街並タヌール通りで、弟アルベルトと出会ったキャメル。でも弟アルベルトは、魔女に魔法をかけられて、お菓子のマシュマロの姿になっていました。
「たしかタヌール通りに、お父さんが住んでいるって、おばあちゃんが言っていたわ。アルベルト、お父さんは見つかったの?そしてお母さんは何処にいるの?」とキャメルはアルベルトに尋ねました。
「僕とお母さんは、おばあちゃんからお父さんの住所を聞いて、このタヌール通りにやってきたんだ。そしてやっと探していた家が見つかったんだけど、家の中はからっぽで、お父さんは居なかったんだよ。僕とお母さんは、その家でお菓子屋をしながら、お父さんの帰りを待つ事にしたんだ。そしたら突然魔女が現れて、お母さんを連れ去っていったんだよ」と、アルベルトは涙をぽろぽろ流しながら言いました。

■お菓子の大好きな300才の魔女

その昔、お菓子の大好きな魔女が森に住んでいました。300才にもなるその魔女は、毎日、お菓子を食べて暮らしていましたが、3年前の297回目の誕生日に、魔法で作ったバースデーケーキを見て、ふと、ため息つきました。
「あーもう食べあきたよ、魔法で作ったお菓子なんて。それに一人で食べてもちっともおいしくないね」と、寂しそうに言いました。そして魔女は、人間たちが沢山住んでいるコルマールの町にやってきました。

魔女はどうしてコルマールへきたんでしょう?それはコルマールの街並には、おいしいお菓子屋さんが沢山建ち並んでいて、甘い香りが町中漂っていたからです。
「コルマールには人間たちが沢山居て、みんな楽しそうだね」と、魔女は人間たちをまじまじと見つめながら、小さな声で言いました。そして自分のお城へ帰って、一人寂しくベッドに横たわりました。

ところが、いきなり起き上がって、目をらんらんと輝かせて言いました。「そうだ!コルマールの丘の上にケーキのお城を造ってお菓子の工場にしよう!そして人間たちを、その工場で働かせて、人間の作ったおいしいお菓子をおなか一杯いただく事にするぞ」と魔女は悪知恵を働かせて「ハハハハハ」と不気味に笑い声を上げたのでした。
それから魔女はすぐ、コルマールの丘の上に、魔法のケーキのお城を造りました。そしてコルマールの町のお菓子屋で働いている人々を、無理やりお城に連れていき、お菓子工場の職人として働かせたのでした。

■魔女のお城へ

「魔女はお城に、沢山の人々を連れていってお菓子作りをさせているんだよ。その中に僕のお母さんもいるんだよ。すごいんだよ!魔女は1日にお菓子を10Kgほども食べるんだよ」とアルベルトは言いました。

「魔女は、いくらでも魔法の力でお菓子を作れるはずなのに、どうして人間の作ったお菓子を、そんなに沢山食べるのかしら?」とキャメルは不思議そうに言いながら、アルベルトの顔を見つめました。「僕だって分からないよ。それにコルマールの人々をみんな魔法の力で、マシュマロの姿形に変えてしまったんだよ。きっと他の町に、逃げないようにしたんだ」とアルベルトは、キャメルにしがみついて、泣きながら言いました。

「ひどいわね。魔女は自分の事ばかり考えて、他の人を苦しめているのね。そんな事をしても、魔女はちっとも幸せになれないのにね」とキャメルが言うと、アルベルトが慌ただしい表情をしながら「お姉ちゃん!早くお母さんを助けにいこうよ」と涙を手で拭きながら、キャメルに言いました。「そうね。早くお母さんや、沢山の人々を助けにいきましょう」とキャメルは言いながら、立ちあがって教会へ集まったコルマールの人々に向かって言いました。「これから魔女のお城へいって、魔女と話をしてきます。コルマールの人々を人間に戻して、自由にしてもらえるように。そして皆さんが元の人間にもどって自由の身になったら豊かな町になるように、アルザスのすべての町や村が豊になるように、みんなで力を合わせて頑張りましょう」とキャメルは大きな声で力強く言いました。
教会へ集まったコルマールの人々は、しばらくだまってキャメルの言う事に耳を傾けていましたが、しばらくすると、がやがや喋りはじめて「気をつけるのよ。相手は魔法で何するか分からない魔女よ」「君一人の力じゃ無理だと思うがね」「マシュマロ人間でもいいさ。このまま素直に魔女の言う通りにしていればいいのさ」「行っても無駄よ」「お願い!頑張ってみて」と口々に言いました。

それからキャメルとアルベルトは、教会へ集まった人々の間を、静かに歩きはじめて、教会の門の方へ向かいました。そして教会を後にして、丘の上に建つ魔女のケーキのお城の方へと歩いていきました。教会に集まったコルマールの人々は、心配そうにキャメルとアルベルトを見つめながら、教会の門の所へぞろぞろと集まって、手をふって見送りました。

■魔女現れる

しばらくいくと、町はずれに小さな丘が現れて、その丘の上にケーキのお城が見えてきました。キャメルは急に立ち止まって、アルベルトの方を見ました。そして、「アルベルト、おばあちゃんの事おぼえている?」とアルベルトに尋ねました。
「うん、とても優しかったよ」と、アルベルトは静かな口調で言いました。
「あのね、おばあちゃん亡くなったのよ」とキャメルが言うと、アルベルトはしばらくだまったまま、キャメルの顔を見つめていましたが、とても寂しそうな顔をして、「えっ、そうなの」と、ポツリと小さな声で言いました。そして下をうつむいて、だまって歩きはじめました。キャメルは立ち止まったまま、アルベルトの寂しそうな小さなマシュマロの後ろ姿をじっと見つめて、とてもいたたまれない気持ちになりました。そして、「アルベルト、頑張ろう!お父さんや、お母さんと一緒にリクヴィールの村へ帰ろう!そして家族で一生懸命働いて、村が豊になるように頑張ろう!」と力強くアルベルトに言いました。その時キャメルの目は、青く澄んだサファイアのようにキラキラ輝いていました。キャメルの言葉を、背後でじっと聞いていたアルベルトは、再びキャメルにしがみつきました。そして「絶対頑張るよ」と大声で泣き叫びました。キャメルは、アルベルトを包み込むように、力強く抱きしめました。

そこへ突然、嵐のように風が吹きはじめました。びっくりしたキャメルとアルベルトは、顔を上げて辺りを見回しました。すると、道の真ん中にまっ黒なマントをはおった魔女が、風にマントをひるがえしながら、立ちはだかっていました。「お姉ちゃん、魔女!魔女だよ」とアルベルトが、魔女を指差して言いました。キャメルは初めて見る魔女に、ドキドキしながら勇気をふりしぼって、大きな声をはり上げて言いました。「お願い!コルマールの人々を自由にしてあげて!あなたのわがままで、とらわれの身になった人々の事を考えてあげて!自分の故郷に家族を残したままで会えなくなった人たちも沢山いるのよ」
すると魔女は、黒いマントをさらに強くひるがえして「ハハハハハハ」と不気味な大声で笑いました。そして魔法の杖をふところから取り出すと、大空に向けて魔法の杖を振り回しました。そして大きな声で叫びました。「さあ、コルマールの秘密を知った者は、どうなるか覚えておいで!二人ともあの家の石の壁に当たって粉々になっておしまい!」と言って、美しい蜂蜜色の大きな家の石の壁へ、キャメルとアルベルトを吹き飛ばしました。
と、その時「お姉ちゃん、危ない!」とアルベルトが石の壁にピッタリと張り付いて、キャメルを受け止めました。

そうです。アルベルトの体は、ふわふわのマシュマロなので、どこにぶつかっても体が柔らかく、傷付かないのです。そしてアルベルトの体が、支えのクッションのようになってキャメルを助けたのでした。それから石の壁へぶつかった反動で、二人は空高く吹き飛んでいきました。
そして吹き飛んでいった先は、ちょうど丘の上の魔女のケーキのお城の方でした。
キャメルとアルベルトはお城の上まで吹き飛んでいくと、急降下でお城の上へ落ちていきました。「きゃーケーキのお城に落ちちゃうわ!」「お姉ちゃん、魔女のケーキのお城だよ!」


次号へ

さあ、キャメルとアルベルトは魔女に吹き飛ばされて、ケーキのお城へ落ちていきました。
無事に助かるのでしょうか?そして魔女はどんな姿をしてるのでしょうね。
次をお楽しみに。


▼妖精プルグリムとお菓子の国
Vol.1「キャメルと小さな木組みの家」
Vol.2「とても悲しい出来事と不思議の森」
Vol.3「不思議の森の中へ」
Vol.4「不思議の森の住人トリーアングルペルソンヌと、こわい森」
Vol.5「こわい森と、森の妖精プルグリム」
Vol.6「不思議の森からコルマールの町へ」
Vol.7「虹の向こうへ〜はじめての町コルマール」
Vol.8「美しいコルマールの町」
Vol.9「マシュマロの形をした弟アルベルト」
Vol.10「空へ飛んでいった生クリーム」

第一話「妖精プルグリムの森」は全国の書店にて好評発売中。

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☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
文芸社http://www.bungeisha.co.jp/search/detail.php?bid=21973
東京都新宿区新宿1-10-1 TEL.03-5369-2299 FAX.03-5369-3066

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