■空へ飛んでいった生クリーム

キャメルと弟アルベルトは、急降下で魔女のケーキのお城へ落ちていきました。
そして気が付くと、キャメルはゼリービーンズの中に、埋もれて寝ていました。「うぁー」とキャメルは、両手を上げて起き上がりました。「ここは魔女のお城なのね。辺りは生クリームで真っ白!」とキャメルは初めて見るケーキのお城にびっくりして、ドキドキしながら言いました。そして「アルベルト、何処にいるの?」とキャメルは辺りを見回しながら少し大きな声で叫びました。すると「ここだよ、お姉ちゃん」アルベルトの声がしました。「アルベルト何処?何その格好!」体中生クリームだらけになったアルベルトが、キャメルの方へ駆け寄ってきました。まるで雪だるまみたいです。「ハハハ。アルベルト、まるで真っ白お化けみたいよ」とキャメルは立ち上がって、アルベルトの体に付いている生クリームを、払いのけました。すると不思議!生クリームは、メレンゲのようにふわふわで、さらっとしていて、アルベルトの体からスルッと離れ、無数の小さな白い玉になって空へ飛んでいきました。
「お姉ちゃん、生クリームが雪みたいに見えるね。ほら、雲の上まで飛んでいくよ」「そうね。ここはやっぱり魔法のお城だわ」ふたりは、空へ舞い上がっていく魔法の生クリームを、しばらく眺めていました。

■お菓子の山

お城は人影もなくひっそりとしていました。すると、かすかな物音が聞こえてきました。「カサコソ」物音のする方を見てキャメルが小さな声で叫びました。「おいしそう!チョコやクッキーが積み重なって、まるでお菓子の山だわ」「何か聞こえたよ。いってみよう」アルベルトが小さな声で言いました。ふたりは、そっとお菓子の山に近付きました。

■3人の可愛いキャンディーたち

そして、キャメルがおそるおそるお菓子の山に顔を近付け、中を覗こうとしたとたん、お菓子の山が崩れて、中からキャンディーが3個、いいえ3人飛び出してきました。キャメルはびっくりして腰をぬかしてしまいました。アルベルトもびっくりして後ろに反り返り1回転してしゃがみこんでしまいました。
3人のキャンディーたちは、キャメルとアルベルトをじっと見つめていました。「可愛い!あなたたちも魔法をかけらたの?コルマール人なの?」とキャメルはキャンディーたちに話かけました。
「私たちは、スイスのバーゼルからきたのよ。コルマールへきたとたん魔女が現れて、このお城へ連れてこられたのよ。そして魔法をかけられてキャンディーの形にされて、お城の見張り番をさせられているの」と赤いキャンディーが言いました。
「なんてひどい魔女なの!マシュマロの次は、キャンディーにしちゃうなんて」とキャメルは、プリプリ怒りながら言いました。
すると、アルベルトがお城の壁に掛けてある大きな星の形のクッキーを見つけて手に取りました。「これ、お母さんの匂いがする」と、アルベルトはクッキーに顔を近付けて言いました。
赤いキャンディーが、目をまんまるくしてアルベルトを見つめました。そして「あなた、もしかしてアルベルトでしょ!」と赤いキャンディーは、アルベルトを指差して言いました。
「そうだけど」とアルベルトは小さな声で答えました。「やっぱり、キャメルとアルベルトだったのね。そうじゃないかなって思って、お菓子の山の中から覗いて見てたのよ。実はね、このお菓子工場で働かされている人の中に、リクヴィールの村からきた女の人がいるの。その女の人は、やつれてしまってちっとも元気がないの。それもそのはず、魔女ったらお菓子の事ばかり考えて、お菓子工場で働いている人たちに、あんまり食事を与えてないんだから」

■クッキーにこぼれ落ちた涙

キャメルとアルベルトは、赤いキャンディーの話を、食い入る様にじっと聞いていました「その女の人がね、星空の夜によく窓からお星様を見つめて、キャメルとアルベルトに会えますように。って細い体で、すがるようにお祈りをしているのよ。そしてほら、そこにある2枚の星形クッキーは、その人が祈りを込めて作ったクッキーなの。だってその女の人、窓の隙間から2枚のクッキーを外へ出して、お願い!この2枚のクッキーを、お星様からいちばんよく見える場所に置いて。って私たちに頼んだのよ。だから私たち3人でお城の壁をよじ上って、2枚のクッキーをお城の壁に掛けたのよ」と赤いキャンディーは言いました。
アルベルトは目にいっぱい涙を浮かべて、星形のクッキーを見つめました。そしてアルベルトの涙が、ポタポタとクッキーの上に落ちていきました。すると辺りに、甘いりんごの香りが漂いました。その香りは、優しいお母さんの香りでした。「お母さん!」とアルベルトはクッキーを見つめて、小さな肩を震わせながら叫びました。キャメルはそっとアルベルトの背中を撫でました。そして、もう1枚のクッキーを手に取り、そっと胸に抱きしめました。「早く助けないと、お母さん倒れて死んじゃうわ!ふたりともそのクッキーを食べて、勇気を出してお城の中へ進んでいくのよ」と赤いキャンディーは言いました。そして3人のキャンディーたちは「カサコソ」とお菓子を積み上げて、お菓子の下に潜ってしまいました。

■お城の窓から魔女が!

「早くクッキー食べて、お城の中へ入りましょう」キャメルはクッキーをかじりながらアルベルトに言いました。アルベルトは上を見上げて、「お城のてっぺんに、おいしそうな果物があるよ!取ってくる!お母さんに食べさせるんだ」と言うやいなやスルスルッとお城の壁を、身軽によじ上っていきました。しばらくするとアルベルトは、両手いっぱいに果物を抱えて降りてきました。「まあ、お母さんの好きな葡萄だわ!リクヴィールの村を思い出すわ」キャメルの目にいっぱい涙があふれました。そうなのです。リクヴィールの村は、葡萄畑の真珠と呼ばれるほど、葡萄畑が村一面に広がっているのです。それからキャメルとアルベルトは、星形のクッキーをおいしそうに食べました。
と、その時、お城の中から低いどなり声が聞こえてきました。びっくりしたキャメルとアルベルトは、急に体が固まって動けなくなってしまいました。それもそのはず、お城の壁にあるアメ玉をあしらった窓の中から、つい今しがた道で出会った魔女が、びっくりした顔で、こっちを覗いて見ていたのでした。そして魔女は、お城の窓を勢いよく開けて、「おまえたち!粉々になったはずだと思ったのに!」と大声でどなりました。でも、急に魔女は優しい顔になり、猫撫で声になって、穏やかな口調で喋りはじめました。「まあいいさ。おまえたち、お城の中に入ってみたいだろ。お城には、見た事もないめずらしいお菓子があるんだよ。さあ、あそこにあるらせん階段を、いちばん上まで上っておいで。さあ早く!」キャメルとアルベルトは、キツネにつままれたような顔をしながら、らせん階段の方へ向かいました。「お城の中へ入れるわ!」キャメルはそっとアルベルトの耳もとで囁きました。「うん、お姉ちゃん」とアルベルトが小さな声で答えました。そしてふたりは、ガラスのように、透明で透き通った色をしたアメのらせん階段を、上っていきました。

■お城から見えるコルマールの町

「ほら見て!このケーキのお城は3階建てだよ、お姉ちゃん」お城を眺めていたアルベルトが言いました。すると回りの景色を目を奪われるように見ていたキャメルが「そうね。ここから見るコルマールは、すてきな眺めだわ!キラキラ太陽が輝いて、穏やかで、まるで何事もない幸せな町に見えるわ」と言いました。そしてキャメルは、階段の上を見上げて「それにしても随分高い所に、お城の扉があるのね」と言いながらアルベルトと並んで、らせん階段を上っていきました。すると階段のつきあたりに、大きなねじアメを何本も並べたカラフルなお城の扉が現れました。
「とってもおいしそうな可愛い扉!」とキャメルはその扉にそっと手を触れて、扉を開けようとしました。
すると、アルベルトが扉の横に書いてある文字を、指差しました。キャメルは手を止めて、その文字を見つめました。そして読んでみました。「幸せのお城(ボヌールシャトー)」キャメルはその文字を見て、何だか不思議な気持ちがしました。そしてふたりがぼんやりと、その文字に釘付けになっていると、いきなりお城の扉が勝手に開きはじめました。そして、扉の向こうに魔女が立っていました。「さあ、早くお入り」魔女は優しい声で言いました。
さあ、お城の中へ入ったキャメルとアルベルトどうなるんでしょうね。次をお楽しみに。


次号へ

さて皆さん、魔女ってどういう姿を想像しますか?きっと鷲鼻で、とげとげしい姿を、思い浮かべられるのではないでしょうか?ところが、このお菓子大好きな魔女は、ふくよかな顔をしていて、どこにでもいるおばさんっていう姿をしていました。外見はどことなくにくめない容姿の魔女ですが、心はいつの間にかすさんでしまって、心の悪い魔女になっていました。一体いつからすさんでしまったのでしょう?それは次にお話する事にします。


▼妖精プルグリムとお菓子の国
Vol.1「キャメルと小さな木組みの家」
Vol.2「とても悲しい出来事と不思議の森」
Vol.3「不思議の森の中へ」
Vol.4「不思議の森の住人トリーアングルペルソンヌと、こわい森」
Vol.5「こわい森と、森の妖精プルグリム」
Vol.6「不思議の森からコルマールの町へ」
Vol.7「虹の向こうへ〜はじめての町コルマール」
Vol.8「美しいコルマールの町」
Vol.9「マシュマロの形をした弟アルベルト」
Vol.10「空へ飛んでいった生クリーム」

第一話「妖精プルグリムの森」は全国の書店にて好評発売中。

好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。
四六判・上製・72頁 定価1,365円(税込)
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※全国書店発売ですが、初版の為冊数が少ないので、インターネットや、ブックサービスなどがおすすめです。(すべての書店で注文可)大阪では「住之江水嶋書房」「ヤマハ心斎橋書籍」宮崎では「田中書店」などが多く冊数有ります。

☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
文芸社http://www.bungeisha.co.jp/search/detail.php?bid=21973
東京都新宿区新宿1-10-1 TEL.03-5369-2299 FAX.03-5369-3066

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