「ひゃーおじいさん!」3人のキャンディーたちも、びっくりしておじいさんを見つめました。「おじいさん、私たちキャンディーよ」しばらくしてポムが小さな声で言いました。「ああ、もうわしは、おしまいだ。天使を見るとは、そろそろ天国からお迎えがきているようじゃ」おじいさんは頭を抱え込むようにしてうなだれました。「天国からお迎え?天使じゃないわ。私たちほんとは人間なのよ!100年前に魔女に、魔法をかけられてキャンディーの姿にされているの。本当はスイスのバーゼル人なのよ信じないかもしれないけど、本当の事なの。じつは、私たち魔法を解いてもらいたくて魔女をさがしているの。どういうわけかわからないけど、半分になっちゃった魔法のお菓子のお城から、洞窟に転がり落ちて、そしてここにきちゃったの。おじいさん!黒いマントのおばあさんを見かけなかった?」ポムが息もつかずしゃべり終えると、「黒いマント?魔女なんて、おとぎ話にしか出てこんよ」そうおじいさんは言いながら空を見上げ、ケーキの形をした雲を見つめました。



「昔話じゃが、魔女とお菓子の城の話は聞いた事があるなー。はー、そうじゃ思い出したぞ!わしの親父が言っておったんじゃ!親父は子供の頃、病弱で体が痩せ細って、近所の子供たちからいじめられておった。『弱虫』と言われ続けた父は、ある日、くやしさのあまり泣きながら一人で森にいき、森で一番高い木に登ったんじゃ。その木は、あの森にある」と、おじいさんは向こうに見える小さな森を指差しました。

「しかし、わしの父は木のてっぺんまでのぼれたと思った瞬間、地面を見おろしてガタガタ震えてしまって動けなくなってしまったんじゃ。その内に日が暮れ家に帰れず、父の帰りを待っていた両親は、町中さがし回り、その内に町中の人々がさがし回って、やっと祖父が、あの森の木の上でしがみついて泣いていた父を見つけて助けたんじゃ。父は、町中の笑い者にされてな、学校にもいかなくなり、家に閉じこもったまま外へ出ようとしなくなったんじゃ」と、おじいさんは言うと杖で地面をポンと突いて「そこで、ばあさんが現れたんじゃよ!」と大きく目を見開いてキャンディーたちを見つめました。

「ある日のこと、父の部屋のガラスをトントンたたく者がおってな、窓の外を見ると黒いマントのばあさんが立っておった。びっくりした父はしばらくベッドの隅にかくれておったが、『あんた弱虫でいいのかい?あんたが弱い気持ちでいるから、体が病気になるのさ。さあ、強くなるんだ。だれよりも強く生きて、他の子供たちをおどろかしておやり!あんた一人ぼっちじゃない!私も一人さ。さあ、勇気を出して窓をお開け!』窓の外からばあさんが囁いたんだよ」

父は、ぐっと目をつぶって歯をくいしばり、一気に窓を開けた!今思えばその時、心の扉を開いたんじゃな。とおじいさんは空を眺め、再びケーキの形をした雲をさがして見つめました。「それからな、ばあさんが父に手を差し出し、二人は空を飛んでいった。どこへいったと思う?そう!着いた先は、丘の上のお菓子の城じゃよ。黒いマントのばあさんは、風の谷の崖っぷちに立ち、マントをひるがえし『この城は、あんたたちコルマール人の城さ!さあ、あんた一人の力で城の中へお入り!こわがることはない、お菓子を沢山食べて出ておいで!きっと強くなる!きっとコルマールで一番強い男になるさ』と叫びパタパタとマントをひるがえし消えてしまったそうじゃ」おじいさんは、ケーキの形をした雲が少しずつ流れ、形が変わっていくさまを眺めて話を続けました。

「父は、お菓子の城にかじりついた!いや、お菓子の城の中にあるお菓子をたべつくしたんじゃよ。満腹になった父が城の3階の扉を開け外へ出てみると、なんと、らせん階段がコルマールの町まで続いておった。コルマールの町が一望に広がって見えていた。父はほこらしげに笑みをうかべ『なんだ!コルマールってこんなに小さかったんだ』そう言いながら、らせん階段を一歩一歩ゆっくりと降りていった。夕暮れの薄紫色に染まるコルマールの町は、それは夢の国のように見えたそうじゃ」おじいさんは、目を閉じてつぶやくように言うと、急に目を見開いてキャンディーたちを見つめ、「それから父は学校へ通い、一生懸命勉強し、成人式を迎えて市の役所で働き、数年後に市長に選ばれたんじゃ。『お菓子の城は宝物だ』と父はよく言っとったよ。今その丘はお菓子公園になって子供たちの遊び場じゃ。もちろんお菓子の城なんて影も形もないが、だが一、つい最近不思議なことがあってな。お城が半分だけ姿を現したそうじゃ。わしは見ておらんが」とおじいさんが喋り終えたとたん「お城が半分!それだよ」「それ!」3人のキャンディーたちは口をそろえて叫びました。

「おい、びっくりするじゃないか。年寄りをびっくりさせよって。まてよ!そうだ!絵だ!絵がある。父がお菓子の城と、黒いマントのばあさんをスケッチブックに書いておった。わしの家にある。あんたがたに見てもらおう。
あんたがたのことは信じよう、信じているからこそ父の書き残した絵を見てもらいたい」おじいさんは手をキャンディーたちに差しのべました。キャンディーたちはピョコピョコおじいさんの手の平に飛びのり、おじいさんは、そっと地面にキャンディーたちを降ろしました。キャンディーたちとおじいさんはゆっくりと向こうに見える小さな森のほうへ歩いていきました。


 

「私たち走らないとついていけない」「こんな森のどこに家が?」「ひゃー」「うぁー」「あれがおうち?」3人のキャンディーたちは、おどろきの声を上げました。

次号へ続く



好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。
四六判・上製・72頁 定価1,365円(税込)
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☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
文芸社http://www.bungeisha.co.jp/search/detail.php?bid=21973
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