まるで夢見る少女の家みたい!


 なんと!そこには、直径6メートルほどもある大木が2本立っていて、木の幹には、可愛い窓や扉がくっついていました。そして何よりも、鮮やかな赤色のいちごのテントが、3人のキャンディーたちの目にとまりました。「おじいさんの家、木の中?」「おじいさん!いちごのパラソル、か、 可愛いね」「すごいよ!こんな大きな木、見た事もないよ」キャンディーたちは立ちどまり、おじいさんの家を眺めていました。「そうさ、ここがわしの家さ。大きな2本の木が、わしの住まいなんだよ。ほら、正面に階段があるだろう、あの階段をのぼったところに、わしの寝室があるんだ」おじいさんは、キャンディーたちの後 ろから、指を差して言いました。「わぁー可愛いベッドが見えるわ!」「ひゃー、カーテンも手作りなの?」「まるで、夢見る少女の家だよ!」キャンディーたちは、手のひらを口に持っていき、目をまんまるくして見ていました。おじいさんは、少し顔を赤く染めて、はずかしそうに「そうさ、わしの造った家じゃ。1年かかった かな?こつこつ木を彫りつづけて、やっとこの春に完成したんじゃ。わしは、いちご大好き!女の子みたいな夢を持って悪いかな?」おじさんは草むらに腰を降ろして、杖を立て、両手を杖の上にのせました。

  3人のキャンディーたちは、おじさんのズボンの裾の回りにやってきて、ズボンをつかんでゆらして、「おじさん!いつま でも夢を持ちつづけてステキ!」と声をかけました。「おお、ズボンがやぶれるじゃないか。実はな 、町で暮らすのが寂しくなってここへきたんじゃ。わしには子供もいないし、ばあさんも亡くなってしまった」おじいさんは声をつまらせ話をづづけました。「ばあさんが亡くなって、木こりの仕事をやめた。そして、わしも死のうと思ってこの森にきたんじゃ。すると、この大きな2本の木が『ここへおいで』としゃべったんじ ゃよ。ここへ?わしは、2本の木の幹に顔を近づけ、耳を当ててみた。すると、サラサラという水の流れる音が聞こえたんじゃよ。昔から、この地面の下には、命の水という神様の水が流れておってな、その命の水を飲んだ者は、長生きできるといわれているんじゃ。「じゃあ、この2本の木は命の水を、一生懸命吸って大きくなっ たんだね」グランが言いました。「ああ、わしは、この木に生きる力をもらったんじゃよ。この木と一緒に暮らそうと思った」おじいさんは、うつろな目をして、こもれ日に輝く木々を眺めました。

おじいさん、一人ぼっちになっても負けないで!

「この2本の木は、父が子供の頃よく遊んでいた木なんじゃよ。わしは子供の頃、一度しか、ここへはきた事がなかったが・・・。」おじいさんはその時、子供の頃を思い出していました。「この森、おじいさんのものなの?」ミエルがたずねました。「ああ、わしのおじいさ んの森だったんじゃよ」「この木、ひょっとして、おじいさんの、お父さんが、てっぺんまでのぼって、降りられなくなった木じゃないの?」ポムが、正面の大きな木を指差して言いました。「そうさ、正面の木は、この森でいちばん高い木なんじゃよ」おじいさんは見上げて、正面の、高い木の枝を指差しました。3人のキャンディーたちは、いっせいに見上げました。「あの枝に、父はしがみついて泣いていたんじゃ」 「あんな大きな木、よくのぼれたわね」ポムがびっくりした顔をして言いました。

  「父の子供の頃は、こんなに大きな木じゃなかったんだよ。ひょろひょろとして、いまにも枯れてしまいそうな木だったそうじゃ。しかし、父が学校へいき一生懸命勉強するようになって、みるみる大きくなっていった。と父は話しておった。まるで、 この木は父の姿のようじゃ」と言いながら、おじいさんは目に涙をいっぱいためて、声を弱弱しくふるわせながら「わしは、父のように、えらくはなれなかったよ。勉強がきらいだったからな」と言うと、悲しそうに顔をふるわせて泣いていました。「おじさんの生き方は、すばらしいと思うわ!こんなに上手に、いちごの家が造れ る人は他にいないわ!」ポムが大きな声を、はり上げて言いました。おじいさんは、びっくりした顔をしてポムを見つめました。「そうじゃ!一人一人顔が違うように、みんな自分にしか出来ない得意なものを持っているんじゃな!この世の人間は、みんなそれぞれ優等生という事じゃ」おじいさんは、にっこり微笑みながら、キャ ンディーたちを見つめました。すると、キャンディーたちも、にっこりと微笑みかえしました。そして、ピョコピョコとおじいさんの杖をよじのぼって、おじいさんの手の甲にのると、ポムとグランは、自分の帽子を取り、ミエルは自分の耳を広げ、おじいさんの頬についた涙を拭きました。

 「おお、なんと優しい!あんたがたは、 やっぱり3人の天使じゃ」おじいさんは、囁くように言いました。「ありがとう」おじいさんは、キャンディーたちを手のひらにのせ、地面に降ろしました。「おじいさん、一人ぼっちになっても負けないで」ミエルが言いました。「一人?ここにいると一人じゃないよ。木々のはっぱが風にのって歌をうたってくれたり、沢山の動 物や虫たちが、わしのあいてをしてくれる。時計だっていらない、小鳥たちが朝夕鳴いて知らせてくれるからな。わしはこの森にきてから、動物たちと、話ができるようになったんじゃ。
 
  「へぇーすごい!」キャンディーたちは、目をまるくして口をそろえて言いました。「それに、自然の中で暮らすのは忙しい。毎日、水くみにい ったり、魚を釣ったり、木の実を取りにいったりで、毎日あっという間に日が暮れる。おお!こんな話しておったら日が暮れてしまう!さあ、スケッチブックをさがすことにしよう」おじいさんは杖をついて立ち上がり、左に見える木の家の方へ歩いていきました。キャンディーたちも必死に走り、おじさんの後ろからついていきま した。

いちごのバルコニーと、ハートの飾りの付いた本棚


 おじいさんが木の家の扉を開けて中へ入ると、キャンディーたちもつづいて入りました。キャンディーたちは、口をポカンと開け、部屋を見渡しました。「階段があるわ」ポムが見上げて言いました。「あっ上にも、いちごのテント!」キャンディーたちは、階段の上にある 真っ赤ないちごのテントに目がとまりました。「ああ、上はいちごのバルコニーじゃよ。お日さんがあたって、とても気持ちがいいんじゃ。わしは、いつもバルコニーで居眠りしたり、読書をしたり、おっ、そうそう本棚じゃ!」おじいさんは、小さなイスと丸いテーブルをくるりと回り、床に座り込んで、赤いハートの飾りの付い た扉を開けました。

  ハートの扉の中には、3段の棚があって本がぎっしりと詰まっていました。おじいさんは、上の段の右端から一冊ずつ右手の一指し指を当て、「たしか、この棚に入れたはずじゃが」と、スケッチブックをさがしはじめました。キャンディーたちは、静かに丸いテーブルをよじのぼって待ちわびていました。「お ーあった!」おじいさんは、2段目の真ん中から虹色の表紙のスケッチブックを取り出し、キャンディーたちの目の前へ置きました。「さあ、よく見てくれ」おじいさんは虹色の表紙をめくり、白い画用紙を1枚ずつていねいにめくりはじめました。1枚、2枚、そして3枚目に、絵の具の鮮やかな絵が、キャンディーたちの目に入 りました。「あーっ」キャンディーたちは、おどろきの声を上げました。

次号へ続く

著者から読者の皆様方へ
この度は、2作目の本(幸せのアルザスクローバー)出版記念プレゼントに、沢山のご応募ありがとうございました。皆様方の温かいメッセージメールは、作者として励みになります。今後、良い作品へとつながる様、頑張って書いていきたいと思います。
あかまつようこ

 

次号へ続く



好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。
四六判・上製・72頁 定価1,365円(税込)
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☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
文芸社http://www.bungeisha.co.jp/search/detail.php?bid=21973
東京都新宿区新宿1-10-1 TEL.03-5369-2299 FAX.03-5369-3066
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