秘密の鍵

新連載開始!!
今回は第2次世界大戦後のロンドン(イギリス)を舞台としたお話。
空襲をうけ荒廃した町に、ひとり寂しげな少年が一つの鍵を手に……。
エルガーの曲とともにミステリアスなお話が展開します。

あかまつさんの他作品はこちらへ

「序章」
ここは、イギリス、(注)コッツウォルズのなだらかな草原の丘
その、何ともミステリアスなお話は、ここから始まったのです。
時は、1946年5月1日夜明け前の事、突然、草原の丘に春の嵐が激しく吹き荒れました。ビュービュー、うす暗い早朝の草原の大地へと風は吹き進み、ぽつんと大地にたたずむ一本の大木を直撃しました。
大木の枝は激しく揺れ動き、青々と茂った若葉達が風の中でせわしく踊り動きました。しばらくすると、その中で最も美しい一枚の若葉が、木の枝から離れて大空高く舞い上がったのです。一枚の若葉が
春風は、ピューピューと一枚の木の葉をのせ、遠く遠くロンドン上空まで吹き進み、急にぴたりと静まりました。
すると若葉は、地上へ向けて降りはじめたのです。その姿は、まるで木の葉の妖精が舞い踊っているかの様に、はらりはらりと舞い降りていったのです。
その頃、イギリス、ロンドンの町は第二次世界大戦が終わった直後で、家や家族を失った人々の数は多く、市民の暮らしは貧しいものでした。

 

第3作 秘密の鍵 (プルグリムとバラの花の妖精)

主な登場人物
ローズ・ブリンテン(バラの花の妖精)
レオ・スティーブンス(ロンドン郊外に住む美少年)
トマス・オースティン(レオの友人)
フランセス・キプリング(乳母)
アーニャ・キプリング(フランセスの娘)
その他 様々な妖精達・音楽 エルガー作曲交響曲第一番

 

サンメリーズ教会にて〜

「これいくら?」「さあさあ、元気が出る卵、生みたての卵だよ!」「おじさん、このトマトちょうだい!」人々のざわめきがサンメリーズ教会から響きわたってきます。それもそのはず、沢山の人が広場のあちこちに麻の布を広げ、野菜、果物、家具や小物まで所狭しと売り物の品じなを並べて商いをしているのです。
この日は休日という事もあって、町中の買い物客で広場はごった返していました。
「ちょいと!そこの坊や!あんた、あんただよ!」ひときわ野太い声が、広場に響きわたりました。
広場の中央にぽつんとたたずむ、寂しげな後ろ姿の少年が振り返りました。サンメリーズ教会にて
「何と、こりゃまた可愛い坊やじゃないか!おーおー、寂しい王子様みたいな顔をして、あんた一人ぼっちなんだろ?かわいそうに、戦争で両親が亡くなってしまったんだろう?さあ、こっちへおいでよ!ここに並んでいるおもちゃ、あんたに一つあげるよ。私からの贈り物さ」
広場の隅で、ずんぐりむっくりとした姿の、まるでイギリスの太った魔女みたいな女の人が、少年に声をかけました。
女の人は地面に座り込んで、回りに麻の布を敷きつめ、麻布の上に沢山アンティーク小物を並べていました。
少年は女の人に近付き、腰を屈めて売り物の品じなを一つ一つ興味深く眺めました。
「あんた、それにしても派手なサマーセーター着てるね、とても戦争直後とは思えないよ」「このセーター、母さんが生きてる時、編んでくれたんだ!どんなに苦しくても、明るく星のように輝いて生きるんだよ!って言いながら編んでた」「そ、そうかい、母親の形見なんだね。おっと、今あんたが王子様のような白い指先で持ってる人形はね、昔、貴族のおぼっちゃまが可愛がってたおもちゃなんだよ。」「えっ、ここに並んでいる物は、昔の人が使ってた物なの?」
少年は、びっくりした目をして見上げ、女の人の顔を見つめました。
「ああ、そうだよ。私はね、昔の人が大切に使っていた物を、あちこちから頂いて、ここに並べて売っているんだよ。そんな目で見ないでおくれよ!ちゃんと家でとれた野菜と交換して、品物を頂いているんだからね。盗んだ物を、ここで売ってるんじゃないんだよ」「あそこにある鍵は?」少年は立ち上がり、麻の布の上に置かれた沢山の品じなの中から、赤い色をした鍵を指さしました。

バラの香りの赤い鍵

「ああ、その鍵は、ある女の人から頂いたんだよ。何でもその鍵は、コッツウォルズ地方にある古いお屋敷の鍵だったらしいよ。さぞかし花ばなに囲まれた幸せな、お屋敷だったんだろうね、鍵までバラ色をしているんだからさ。あんたにあげるよ!可愛いあんたにぴったりだよ!ズボンのポケットにでも掛けて、お守りにでもおしよ!」女の人は鍵に付いている金の鎖を持ち上げ、少年に差し出しました。
と、雲の上から、はらりはらりと一枚の若葉が、舞い降りてきました。
「おや、あんなに高い空から若葉、すっかり春になったのも忘れちまって……。」女の人が見上げて言うと、少年も見上げました。
「春の訪れを知らせてくれてるんだよ!」「そうだね、戦争なんでもうこりごりだよ!」「僕の家の門の鍵、戦争中にこわれてしまったんだ!」少年は、再び赤い鍵を見つめました。「その鍵、門につるしておくよ!もう二度と戦争が起こりません様にって!おばあさん少しでもお金払うよ」少年は、ポケットに手を入れました。
「ああ、この鍵は私からの贈り物、大切におし!きっと幸せを掴むよ!」「うん、おばさん、ありがとう」少年は鍵を受け取り、手の平にのせ見つめました。手の平に「B、?それにしても何故こんなに赤いんだろう?何となくバラの香りがする……。」何処からともなく美しい調べが聞こえてきて〜(注)エルガー作曲交響曲第1番3楽章
少年の心の中を、ミステリアスで不思議な風が吹きぬけていったのです。

 

次号へ続く〜お楽しみに

(注)コッツウォルズ
ロンドンから西へ200km、イギリス南西部の中心、グロースターシャー州の周辺に広がる、なだらかな丘陵地帯
羊毛産業の盛んな地区で、貴族の館や大富豪の館が点在する。

(注)エルガー
イギリス人作曲家
1908年に交響曲第一番変イ長調作品55は作曲され、1楽章〜4楽章まであります。
その内の3楽章は、最もイングランド的作品で、平穏で郷愁を呼び覚ます様な美しい曲です。

 

第2作目販売開始
「ほっ」と幸せな気持ちになります。

好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。


四六判・上製・72頁 定価1,365円(税込)
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☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。


文芸社http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/4-8355-8095-8.jsp
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