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新連載開始!! |
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「鍵と同じ色の、花びら……」
少年は、赤い鍵に付いた金の鎖を持ち上げて、鍵と少女を交互に見つめました。
「あの青い色は?」
少女の花びらの間から、涙の様な青い滴がこぼれ落ちました。少年は、鍵に付いた金の鎖を持ち上げたまま、静かに、ゆっくり一歩、二歩と少女に近付き、立ちどまりました。
「人間?かな」少年は、ドキドキしながら右腕を伸ばして、少女に鍵を差し出しました。
すると、花びらからこぼれ落ちていた青い滴は消えて、ニコッと少女が微笑みました。
「門は閉ざされたままだったよな!どうやって庭に入ったんだろう?」
少年の心の中に、ミステリアスな気持ちが押し寄せてきて、「あ、あの、き、君」と口を開くと、
「見つかって本当に良かった!」少女は、右の手のひらを差し出しました。
少年が鍵を少女の手のひらにのせると、少女は頭を下げ、ふわっと空中に浮かび上がり、プラタナスの木の横の道の上空へ舞い上がりました。
「うわっ!」
少年は、びっくりして地面に倒れ、茫然と空中に舞い上がった少女を見つめました。
花雲の中に見える花屋敷
少女は少年を見つめながら、少年の目の前に降りてきて上空を指差しました。
「き、君、妖精ピクシー?じゃないよね。映画とか、本に出てくる妖精じゃないよ。バラ?そうだ!バラの妖精なんだ!」
少女の指差した空が、だんだん白い雲に覆われて、空がまっ白になったかと思うと、今度は空に川の様な道筋が現れました。そして、その先に花雲が見え隠れして、花雲の中に花々に囲まれた古い屋敷が見えてきました。

「その鍵。よ、妖精の家の鍵だったんだ!」少女の顔が突然、悲しい表情に変わりました。
「あー、あの、鍵が見つかったんだからさ、そんなに悲しまなくたっていいだろ!」
「私、人間なの」
「人間?じゃあ、どうしてそんな花びら体にくっ付けて飛んでるわけ?」
「ひどい!好きで飛んでるんじゃないわ!気が付くと、屋敷の扉が閉ざされてしまって……。」
「閉ざされた?信じられないけど魔法の赤い鍵が扉を閉ざしてしまったっていう事?君は現実の世界から放り出されて、庭のバラの妖精になってしまったっていう事?」
少年は立ち上がって、ズボンに付いた土を手で払いました。
「それで、魔法の鍵はどっかへ飛んでいって探してたっていうの?その鍵で屋敷の扉を開ければ現実に戻れるの?」
「ええ、屋敷の中へ入っていけば元に戻ると思う!あなたも家族と会えるのよ!」
「僕も?君の屋敷で家族と会えるって?そんなわけないよ!」少女は、いきなり少年に近付いて両手を強く掴みました。
「私と、コッツウォルズへいきましょう」
「やめてよ!手を離してよ!まったく人間の手だよ!痛っ!君さ、ほんとに妖精なの?妖精のふりしてるんじゃないの?それにさ、ここからコッツウォルズって200キロも先だよ!」
「大丈夫よ、あの空に出来た青い道筋を飛んでいけばすぐに着くわ」
「飛ぶ?僕、飛べないよ!嘘言わないでよ!どうして僕の家族が、君の屋敷に居るのさ!戦争は、もう終わったんだ!僕の家族は、戦争中に連れ去られたんだよ!全身まっ黒の服を着た兵士に連れていかれたのさ!その時に鍵の掛かったこの門が壊されたんだよ!何日も待ってたんだ!でも戻ってこない!家族は捕虜になって殺されたんだ!」
少年はしだいに目に涙を浮かべ、少女をにらみつけると、少女の手を振り解いて白い門へ向かって小道を走っていき、白い門に手を触れました。
その時、ピューッと突風が吹き、プラタナスの木の葉がザワザワザワと激しく揺れ動いて、少女の声が辺りにこだましました。
「待って!あなたの家族は亡くなってなんかないわ!戦争に巻き込まれたんじゃないのよ!コッツウォルズに行けば、私の言ってる事が嘘ではないって分かるわ!」少年は振り返り、改めて少女の姿を見つめ直しました。
「じゃあ、君が妖精に変わった様に、僕の家族も魔法の世界へ迷い込んだって言うの?」
「ええ、その通りよ!今、私が見えるでしょう!あなたは、魔法の扉を開いたの!あなたは家族の元へ旅立つのよ!」少女は花びらを2枚、自分の体から抜き取り、ふんわりと空中を飛んで少年に近付くと、一瞬に少年の背中に2枚の花びらをくっ付けました。

魔法の世界って、本当にあるんだ!

「さあ、手を大空に向けて!飛ぶわよ!」少年は、言われるがまま大空に両手をかざしました。
すると、少年の体はふわっと宙に浮いて、背中の2枚の花びらが羽音をたてはじめ少年の体は空高く舞い上がっていったのです。
「うわっ!これって本当の事だよね!うわっハハ!まるで蝶になったみたい!魔法の世界って本当に有るんだ!」少年は宙に浮いたままこわごわと少女に尋ねました。
「ねえ、どうすれば行きたい方向へ飛べるの?少女は少年に近付いて、真剣な眼差しで語りかけました。
「まず、腹ばいになって意識を集中して右手を右へ向けるの、そうしたら右へいくわ。左へいきたければ左手を左へ向けるの。前方へ進む時は、両手を下から前方へ上げればいいのよ」
「ハハハハ、こ、こう?」ロンドン郊外に住む寂しげな少年と、バラの花びらをまとった謎を秘めた少女は、ふんわりと上空へ舞い上がると、空に出来た青空の道筋を辿りながらコッツウォルズへと旅立っていったのです。
次号へ続く〜お楽しみに
好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。

☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/4-8355-8095-8.jsp