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新連載開始!! |
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空に出来た青い道筋は、気味が悪いくらい静かでひっそりとしていました。
「あのさ、僕達ほんとに空を飛んでるの?何も見えないね。下に景色が見えるはずだろ?それに、上空は風がきついはずだよ。これも魔法のせいなの?」
少年は腹ばいになって両手を前方へ伸ばし、そよ風ほどの風を体に受けながら、眼下を小さな雲のかけらだけがスーッと後ろの方へ通り過ぎる様を見つめ、少女に尋ねました。
少女は少年と同じ様に両手を前方へ伸ばしながら、少年に近付いて言いました。
「レオ・スティーブンス!あなたは今、瞬間移動しながらその上を飛んでいるのよ。だから強い風を感じないのよ」
少年は、突然自分の名前を呼ばれてドキッとしました。
「えっ、なぜ僕の名前を知ってるの?それに、君はなぜ僕の家に赤い魔法の鍵があるって分かったのさ?……、あー、そ、そうか!君は妖精だから何でも分かるんだ。それに、ここは魔法の世界だもんね」
少年は空を飛びながら不安な気持ちでいっぱいになり、再び少女に尋ねました。
えっ13才なの?
「ところで、君の名前は?妖精にも名前ってあるの?」
「失礼ねちゃんとあるわよ!名前は、ローズ・ブリテン、年は13才」
「えっ、13才なの?僕と同じ年なんだ」
レオはふと、何千年も年を取らず生き続ける妖精の話、妖精伝説を思い出し、ひょっとして、この少女は何百年も昔から13才なのでは?という気がしてきて、こわごわ口を開きました。
「妖精も学校へいくの?妖精の学校ってあるの?」
「妖精の学校?妖精の学校なんてしらないわ。私、つい数ヶ月前まで人間だったのよ。ほら百年戦争とかさ、社会の歴史!私、歴史がにがてだったわ。だって先生が戦争の話ばっかりするの。この世は終わりっていう顔して話すのよ」
「あー歴史ね」
レオは少しほっとして上空を流れる雲のかけらを眺め、
「僕、数字がにがてだったな。でも、音楽だけは、いつもトップだったよ。君は?」と尋ねました
。
するとローズは、にっこり微笑んで「私も音楽大好き!」と答えました。
レオは突然思い出した様に、目を丸くして話を続けました。
「僕なんかさ、数字の授業さぼって、友達と裏山へ探検にいった事があるんだ。そしたら道に迷ってさ、学校へ戻ったら次の授業が始まってて、先生にすごく叱られた!ハハ」
するとローズも笑いながらレオにくっ付いて言いました。
「ハハハ私なんか社会の授業が始まると眠くなっちゃって。私だけじゃないの、クラスの半分くらいの生徒が、スースー寝息を立てて眠っちゃうの。そんな時に限ってローズ、答えて!って先生に当てられちゃうんだから」
「ハハハハ」
「ハハハハ」
レオは、なんだかローズがずっと昔から友達だった様な気がしてきて
「ハハハ、思い出すよね、あの時もっと勉強しとけばよかったよ」と言いました。
するとローズもレオの顔を見つめ、「戦争が、楽しい時をなくしちゃうわね。ロンドンの町から何人もの子供達が疎開してきてその頃は逆に花屋敷(注1)はおだやかだった……。」とつぶやきました。
その時、レオは家族や友人の顔を思い浮かべました。
「みんな戦争で、バラバラになっちゃったよ」レオの心に不安な気持ちが押し寄せてきて、再び尋ねました。
「き、君の家、花屋敷ってどんな屋敷なの?」
赤いバラの秘密
「ついこの前までは、屋敷のすべてが暖かい日差しを浴びてる様で平和だったわ。広い庭にいくつもの迷路があって、そこを進んでいくと、突然古い館が現れるの!」
ローズはキラキラした目でレオの顔を見つめ言いました。
「お、おどかさないでよ!それじゃ、お化け屋敷みたい!」ローズは前方に視線を向け、幼い頃の花屋敷を思い浮かべました。
「思い出すわー、3才の誕生日を……。」
「えっ、その頃から不思議な事が起こりはじめてたの?」
「いいえ、ほら、もうすぐコッツウォルズよ!」
ローズは、前方に小さく見える花雲を指差しました。それから腰の辺りの、花びらを1枚抜き取って手のひらにのせ、フーッと息を吹きかけました。すると花びらは、赤いバラの花に変わりました。
「すごい!やっぱり君はバラの妖精なんだ!」レオが、おどろきの声を上げました。
ローズは両手を伸ばし、両手のひらにバラの花をのせ話をつづけました。
「私ね、3才の誕生日の日に、祖父に会いにはじめてコッツウォルズを訪れたの」
「えっ、君はその頃コッツウォルズに住んでいなかったんだ!花屋敷は、おじいさんの屋敷だったの?」
「ええ、祖父の家なの。父と祖父は気が合わなくて、あの日も顔を合わさなかった…。祖父の暖かい眼差しを今でも思い出すわ。祖父は誕生日のあの日、足を痛めていて、赤いバラの庭のオレンジ色の籐のイスに腰掛けていたわ。3才の誕生会が母屋の館で行われた後、私は館を抜け出して走ったの!すると深い緑色をした生け垣のトンネルの向こうに、祖父を見つけたの。祖父の姿は赤いバラに埋もれて見えて、足元には黄金色のネコが座っていたわ。私はそこで赤いバラの秘密を聞いたの」
「赤いバラの秘密って?」
ローズは、手のひらにのせたバラの花を引き寄せ花の中心を見つめました。
「祖父は赤いバラを手に1本持っていたわ。そして私に微笑んだ。
『誕生日おめでとう。大きな花だろう。ほら持ってごらん。大丈夫さ、この花にはトゲがないんだよ。』
私は自分の顔の大きさくらいある大きな花にびっくりして、おそるおそる茎を掴み、花の中心を覗き込んだ!」
「ひょっとして、花の中に何か潜んでいたんだろう?」
「いいえ、優しい香りが漂って、私は思わず祖父にしがみ付いたの。」
すると祖父は私の背中を撫で

『ローズ、わしにはローズの気持ちが痛いほどよく分かる。会えても、いつかは必ず別れるものさ。おじいちゃんはローズの心の中に、ずっと居る。人は、人とつながっているんだよ。貴族も労働者も、皆、どこかで支え合って生きているんだ。ローズ寂しくなった時には、ここへおいで!ほら、聞こえるだろう!小鳥達がさえずっておるぞ、ここへおいでとな……。ローズが再びここへきたなら、おじいちゃんは庭になろう。そしてローズを守る……。ローズ顔をあげてごらん……、赤い花がいっぱい咲いているだろう。この花達はローズという花なんだよ。おじいちゃんは幼い頃、心臓を患っていて、この赤いバラの実(注2)に助けられた!ローズ、周りの命を守る強いバラの花になりなさい!そうすれば寂しい気持ちは、どこかへとんでいくぞ』
祖父は私の頬を撫で微笑んで、籐のイスからヨロヨロと立ち上がって、庭の向こうに見える茅葺き屋根の家を指差したの。私はその時、じっと茅葺き屋根の、家の窓を見つめていた。
『ローズごらん!本物の赤いバラになれる秘密が、あの家の中に隠れておる!ローズはきっと、英国の赤いバラと呼ばれる人間になる!』って、
そして私の手を握りしめて『いつの日か、再びここで会おう』って、祖父の目に涙があふれ、私は庭を後にした。
おじいちゃんの温かいぬくもりを感じたのは、それが最初で最後だったの。祖父も祖母も亡くなってしまったわ」ローズは声をつまらせながら言うと、両手をポンと上げました。
するとバラの花は散りはじめ、花びらとなり、ローズの身体を包みこみ、後ろへ去っていきました。
レオは、ローズの横顔を見つめ、いたたまれない気持ちになり、わざと大きな声を張り上げ言いました。
「なんだか泣けてきちゃった!僕も家族の事、思い出しちゃった!ローズ!今も君の中に、おじいさんは生き続けているんだよ!なんとなく分かってきた様な気がする、君がバラの妖精になった訳がね。そのおじいさんの大切な庭が、誰かの手で壊されたんだ!そして茅葺き屋根の家の中で、何かが起きた!それで君は花ばなを守る為に、バラの妖精に生まれ変ったんだ!そうだろ?でも、おじいさんは君に、英国の赤いバラと呼ばれる人間になる。って言ったんだよね。ひょっとして君にはもっと大きな役目があるって言ってるんじゃないの?」
ローズは首をかしげ、「それが、今の私には分からないの。あの時何かが起きて、気が付いてみると私はバラの妖精になっていて、この鍵が何の鍵だったのか、覚えていないんだもの」と胸元の花芯に差した鍵を見ながら、悲しそうに言いました。
「えっ、何の鍵か、分からないんだ!ますます謎が解けなくなってきたよ」
レオは、ローズの話を聞いている内に、逆に謎に包まれて出口をさがし求めているのは、ローズの方だという思いがして、自分の家族が、何者かに捕らわれているかもしれない花屋敷の秘密を、解き明かせねば!という冒険心に燃えた気持ちが湧き上がってきたのです。
「レオ、ほら、花雲が見えてきたわ!あの雲の中へ飛び込めば、そこがコッツウォルズよ!」ローズが再び花雲を指差しました。

「近道って、そういう事だったんだ」レオは、ドキドキワクワクした不思議な気持ちでいっぱいになり、「キャッホー」と思わずさけびました。
次号へ続く〜お楽しみに
(注釈1)花屋敷
ローズの、父方の祖父ジョージ・ブリンテンの、父チャールズ・ブリンテンが所有していたコッツウォルズのマナーハウス(狩猟のための館)を祖父ジョージが譲り受け、美しい花園の館に造り変えたのです。
祖父ジョージは、周囲の草原に羊を飼い、近くの山は、鹿などの動物達の自然保護区とし、狩猟禁止としていました。
祖父ジョージは、広い屋敷の庭に、生け垣で囲んだ庭の部屋(アウトドアルーム)をいくつも造り、その中にローズの為の赤いバラの庭を造りました。
晩年の祖父は、祖母と二人で、毎日の様に赤いバラの庭を訪れ、花の手入れをしながら一日の大半を、庭の横に造られた茅葺き屋根の田舎家で過ごしていました。
祖父と祖母の思いが実り、はじめて見事な大輪の赤いバラの花を咲かせた年(季節は春から夏へかわろうとする頃)に、ローズは、祖父から赤いバラの秘密を聞くのです。(「絵」は、その時のものです)
優しい眼差しでローズに語りかける祖父の姿は、私達の心の奥底の、遠い記憶の中に眠っている温かい愛をも思い出させてくれて、涙があふれる思いがします。
(注釈2)バラの実
バラの花びらが散った後、根元がふくらんで出来る赤い実(ローズヒップ)20分湯でて、砂糖を入れ、冷蔵庫で冷やすとシロップになります。風邪、頭痛、癌、心臓病などに効く。
■■■ 花屋敷の舞台になった秘密の庭 ■■■
コッツウォルズ、ミケルトゥン村にあるヒドコート・マナー・ガーデン歴史的名園の館として、1948年にはナショナルトラストに譲り渡され、現在も保全の努力が続いています。
その庭に、隠された秘密が!その秘密を物語が解き明かす事になるのです。
★カントリーファンのスタッフの方々の支え、読者の皆さんの暖かいメッセージを元にして、
これからも頑張って書きたいと思っています。
あかまつようこ
好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。

☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/4-8355-8095-8.jsp