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新連載開始!! |
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ピンク色の花の形を縁取った花雲が、目の前に!レオとローズは、花雲の真ん中のフワフワとした真っ白の雲の中に飛び込みました。
「うぁっ!真っ白で、何も見えない!ローズ!ほんとにここがコッツウォルズ?」やがて雲の切れ目から光が差して、レオがさけびました。
「すげぇ!なだらかな丘と草原!ここがコッツウォルズなんだ!」
レオは、まるで別世界に迷いこんだ様な気持ちになり、眼下を見下ろしました。
なだらかな丘の上に広がるエバーグリーン!その中に、点々とわた菓子のかけらの様なものがうごめいて見え……
「あーっ、羊だよ!のんびり横たわって居眠りしてる。戦争なんて知らないよって言ってるみたい。ロンドンはガレキの山だっていうのにさ、ここは昔のままなんだね」
「そうよ」
「ローズ!何で急に消えちゃうんだよ!」
「ずっとレオのそばにいるわよ。コッツウォルズは、ローマ帝国がブリテン島を支配していた時代に、羊毛織物業で繁栄したって歴史の先生が言ってたわ。その頃の豊かな暮らしが、今も息づいているのよ」
「ほんとだね……」
レオが見つめるずっと先の地平線の辺りに、そびえ立つ古い石造りのお城が、霧の中に見え隠れして、レオは、百年くらい前のビクトリアン朝の世界を連想していました。
「ほんとに昔の世界だね……、君の花屋敷ってどこなの?」
「えっ?」
ローズが振り向き、一瞬、ローズの姿が貴婦人の衣装をまとった姿に見えました。
「レオ、何ぼんやりしてるの!ほら、あそこ!」ローズが山手の方を指差しました。
「あ、あの深い緑色の生け垣の向こうが、全部花屋敷?すっごいよ!あれっ、あの大きな木、あの独特の形をした若葉、サンメリーズ教会で見た若葉そっくり!」
「レオ何ぶつぶつ言ってるの?さあ、両手を下に向けて!降りるわよ!」
「ちょっ、ちょっとまってよ」
ローズとレオは、生け垣の中に見えるライムストーンの古い門柱に挟まれた青い鉄の門とびらを目指して舞い降りていきました。
「すげぇ、イチイの木の生け垣が左右にずっと続いてる」レオが、生け垣に触ろうとしました。
「レオ、気を付けて!イチイには毒があるの」
レオはあわてて手をひっこめ、青い鉄の門とびらの前へいき、鉄柵を両手で握りしめ、屋敷の中を覗きこみました。
「うわっ、お化けみたいにでっかいよ、この白いバラ、つるが巻き付いて先が全然見えない!これじゃ、花のお化け屋敷って感じだよ!僕の家族がこの中に?」
「レオ、今、この屋敷は、様々な妖精達が入りこんで、変わってしまったの」
「ローズ、やっぱ、信じようとしても、信じられないよ。この世に、いろんな姿をした妖精達が本当にいるの?妖精じゃなくて…、君もさ、幽霊じゃないの?」
「レオ、じゃあ聞くけど昔から言い伝えられてきた妖精伝説を、なぜ知ってるの?あなたは私を見て、ピクシー?って言ったでしょう?あなたは魔法を信じたから、私とここへきたのよ!ここへきたくてきたの。」
「家族を助けようとしてる。そうでしょう?誰だって未知の世界へ飛んでいけるのよ」
「うん、そうかもね、信じると思ってもいない事が起こる。出来ないと思っていた事が、不思議に出来たり…、という事は、魔法って現実から前向きに飛び出す事なんだ!あれっ、あの黒い大きな石にもBっていう文字が刻みこまれてる!」
レオは門の前に置かれた二つの石の上に目を向け石に近寄り、じっとBの文字を見つめました。石の上にはうっすら苔が生えていて、Bの文字だけが黒く浮き上がって見えました。
「ローズ、君の事、もっと話してよ。このままじゃ花屋敷に入れないよ。君は鍵の事、覚えてないって言ったけど、じゃあ、どうして僕の家へやってきて鍵を受け取ったのさ!」
妖精ローズの秘密
レオとローズは、二つの大きな黒い石の上に腰掛けました。
「レオ、この黒い石、突然現れたの」
「何かさ、暗号を表しているんじゃないの?絶対、鍵のBの文字と関係あるよ」
「実は、鍵がレオの家にあるって知ったのは…、それにレオの家族が花屋敷に捕われてるって話してくれたのは…、母なの」
「えっ、鍵の秘密を知ってるのは君のママなんだ!それでママは何て?今どこにいるの?」
「レオ待って!ちゃんと話すわ」
ローズは母親の話になると急に塞ぎ込んでしまい、小さな声で喋りはじめました。
「私、ロンドンにあるブリンテン伯爵家で生まれたの。父はとてもきびしい人で、子供の教育はコッツウォルズの広い屋敷がぴったりだっていって、私をここへ連れてきたわ。私がまだ6才の頃よ、父は私を一人ここへおいていったの」
「へぇー、一人おいて?」
「祖父も祖母も亡くなって、この屋敷は主人の居ない屋敷になっていたけど、屋敷の中には沢山の召し使い達が住んでいたわ。庭師や料理人など、数えるだけで100人くらいはいたわ」
「すげぇ、僕なんか家族4人だけだよ」
「知ってるわ!母から聞いたわ、レオのお父さんはバイオリニスト、お母さんはピアニストでしょう?妹さん二つ年下なんでしょう?」
「うん、みんな音楽が好きで…、あの時、僕はフルートを習いに、妹のエミリーは歌を習いに一緒に出掛けた。」
「町はずれの十字路に差し掛かった時、突然目の前にミサイル(※注釈1)が降ってきて、近くのビルに炎が上がった…。沢山傷付いたひとが十字路にやってきたんだ…。僕も妹も、戦争の恐ろしさを目の当たりにした!……それで妹は記憶を失い、3才くらいの妹にもどっちゃったんだ…。」
「そうだったの」
「そんな事より話の続きは?」
「ええ、私が6才の時、はじめて父とこの屋敷に訪れたあの日、冷たい風がビュービュー吹いてて、裏門から母屋の館に向かって、父と歩いた庭の小径がとても長く感じて……。」
「やっと館の前に巡り付いた私達の目の前にはたった二人の乳母フランセスと乳母の娘アーニャが立っていたの。

乳母は、一礼して私の前にきて、『ローズお嬢様のお世話は、ロンドンでずっと見て参りました。私がロンドンに参りました時、ローズ様もこのアーニャも、おなじ1才だったのでございますよ。何と、可愛く大きくおなりで!』と、私の顔を覗きこんだフランセスのあの目が怖くて今も忘れられないの。」
「それからね、アーニャが私に近付いて、私の冷たくなった手を、両手で包みこんでくれたわ。アーニャは、私の手を引いて館の中に連れていってくれた…。その時、私は振り向いて『パパー』ってさけんだけど、父の姿はもうそこには無かった……。アーニャは色白で、繊細な顔をしてるの。アーニャと一緒に勉強して、よく遊んだわ。それから年月は経って、ついこの前よ!13才の誕生日の次の日に、この屋敷に何かが起きて、私は赤いバラの庭に倒れていたの。」
「私は自分の姿を見て驚いた!『いやだ!何?このバラの花びら!変ね、胸の花芯みたいなもの抜けない!もしかして私、妖精になった?そんな信じられない!』私は動揺して飛び上がった!『えっ、こんな事ってほんとにあるの?飛べるわ!』私はそのまま飛び続けて、気が付くとロンドンのブリンテン家に降り立っていたの。家のドアの前で何時間も泣き続けたわ。泣き声に気付いた召し使いが家の中へいれてくれて、母の部屋へ通してくれたわ。その時、母は病気で寝こんでいて、父は旅に出て留守だったの…。私は母にすがり付いて泣いたの。すると母が言ったの。『ローズ、1946年5月1日に、ロンドン郊外に住む、レオ・スティーブンスという少年の家にいって、赤い鍵を返してもらうのよ。そしてその少年と館へ入って、鍵を開けなさい!きっと、あなたは人間に戻って、レオも家族と会えるわ!』って言ったの」
「なぜ僕の家族が捕われたの?なぜ君と僕が鍵を開ける事に?」
次号へ続く〜お楽しみに
★カントリーファンのスタッフの方々の支え、読者の皆さんの暖かいメッセージを元にして、
これからも頑張って書きたいと思っています。
あかまつようこ
(注釈1)ミサイル
ナチスドイツ軍はロンドンに新型ミサイルを投下。この時ロンドンの街が破壊されました。
好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。

☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/4-8355-8095-8.jsp