秘密の鍵

新連載開始!!
今回は第2次世界大戦後のロンドン(イギリス)を舞台としたお話。
空襲をうけ荒廃した町に、ひとり寂しげな少年が一つの鍵を手に……。
エルガーの曲とともにミステリアスなお話が展開します。

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ある人

母はある人に頼まれたって言ってた……。」
「ある人?」
ローズはぼんやりと館の前に広がる草原に目を移し、すくっとそびえ立つ一本の大木の、美しい黄緑色の若葉を眺めました。すると若葉がサヤサヤと音をたてて揺れ動いて…ローズは、生まれて初めて母と本音で語り合った、あの日の事を思い出していました。
『パパは何故、私をコッツウォルズへ一人置いていったの?ロンドンにずっと居たかったわ!こんなみじめな思いをしなくてすんだのよ!何で私、妖精なんかになるのよ!ねぇ、何故?』
『ローズ、泣かないで…、お父様にも事情がおありで、それに私も病気になってしまって、あなたには寂しい思いをさせたわね。フランセスには、随分お世話になったわ、これからも、アーニャと仲良く暮らしなさい。』『ローズ、ずっと昔ね、レオのご両親が、コッツウォルズの館で演奏されたの。ピアノとバイオリンの演奏がすばらしいと、あの人はとても感動されて…、あの人はレオとローズに、未来を切り開いてほしいと思っておられるのよ。そしてローズが自分の大切なものに気付いてほしいと思っておられるの』
『あの人って?大切なものって?』
『そう、赤い魔法の鍵は、ローズのいちばん大切なものなのよ。赤い魔法の鍵は自分の力で探して開けなければ開かないわ。ローズが鍵を開けなければ、すべてが崩壊するわ…。すべて…。』
『ひどいわ!何も教えてくれないの?何で私がそこまでしなきゃならないの?』
『ローズ、よく聞いて!貴族の女性が優雅に暮らせたのは昔の事よ!世の中は変わってしまったのよ!心を強く持って、館の主として生きていきなさい。きっと、あの人は、それを望んでおられるから、ある事を解決させる使命をあなたに…。あの人とずっと、あなたの事を見守って…』
『何なのママ、何か言って、言ってよ!嘘、嘘でしょ?ママ、私を一人にしないで!ママー』

「母は、それっきり口を閉じたまま動かなくなって…。」ローズはうつむいて、花びらの間から青い滴をポタポタ落としました。
「ローズ、ママは亡くなったんだね、ローズ、現実の世界にもう一人のローズが居るんだよ!もう一人の自分の為に戦うんだ!君の大切なものを思い出そう。そして僕と鍵を開けよう!」
「ありがとうレオ、レオが私にはいるんだものね、強くなれそうな気がする!レオも一人で寂しい思いをしてるんだものね、私だけじゃないわ」レオは、ふと、黒い石のBの文字を見つめ、戦争中に両親が真っ黒な兵士に連れていかれた日の事を思い出していました。

謎の真っ黒な兵士

「あの時、戦争中に両親が、真っ黒な兵士に連れていかれた日、僕は屋根裏部屋に、フルートを取りにいったんだ。その前の日にヘンデルの王宮の花火っていう曲を、家族で演奏してたんだ。母さんと妹がピアノ、父さんがバイオリン、僕はフルートを…。次の日に屋根裏部屋にいかなかったら、僕も真っ黒な兵士に捕まっていたんだ…。」
「ローズ、真っ黒な兵士って何者なの?てっきり家族は、敵の兵士に捕まって殺されたんだと思った…。」
「レオ、私、真っ黒な兵士を一度も見た事がないの。ただ、この屋敷にいろんな妖精がやってきて、召し使い達も妖精に変わっていたり、中には、妖精の姿にならずに屋敷から逃げ出した人もいて、屋敷の中で出会うのは、様々な姿をした妖精だけ…。」
「そう、そういえばさ、君のママが言ってた、ある人って誰なんだろう?でもとにかく大変な事が起きたんだ。屋敷は、悲鳴をあげているのかもしれない。なんとかしてくれ!ってさけんでるんだよ!ローズ、君の記憶の中に眠ってるものを辿りながら、館の中へ入っていこう!さぁ、飛んでいこう!」
レオは、勢いよく立ち上がり、両手を上げ、背中の花びらの羽根を動かしはじめ、飛び上がろうとしました。
「レオ、待って!今、この屋敷の上空は妖精のバリアが強すぎるわ、危険だわ!人間の力で飛ぶのは無理よ!妖精達の中には人間を食べちゃう妖精もいるのよ!」
「こわっ、じゃあ、裏門から入ろう!」
「裏門は妖精達のたまり場になってるわ。危険よ!そっと歩いていきましょう!」ローズが立ち上がりました。
すると、土の上をトットッと歩く足音が聞こえて、ローズが振り返りました。
「あらっ誰かがこっちへ歩いてくるわ!」
「あっ、ほんとだ!」レオが目を丸くして、驚いて右手を高く上げました。

次号へ続く〜お楽しみに

第2作目販売開始
「ほっ」と幸せな気持ちになります。

好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。


四六判・上製・72頁 定価1,365円(税込)
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☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。


文芸社http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/4-8355-8095-8.jsp
東京都新宿区新宿1-10-1 TEL.03-5369-2299 FAX.03-5369-3066
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