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新連載開始!! |
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「笑う白いバラ」
「はーはー」「ふーつ」
レオとトマスが、息をきらしながら花屋敷の青い門の前に駆けてきました。
「ふたりで何、こそこそ話してたの?」
ロースが、むくれた顔でレオとトマスの顔を交互に見ました。
「いや、トマスがさ、花屋敷に入るのが怖いっていうからさ」
「ごめん!もう大丈夫だから」
「ほんと?」
ローズはトマスのびくついた顔を覗きこんで、門の鉄柵を握りしめ、門の内側に入って
「さあ、我がブリテン家へ、ようこそ」と手招きをしました。
「ようこそって、無事に帰れるのかな?」
「わーっ、ドキドキする」レオとトマスは、屋敷の中へ足を踏み入れました。
ローズは門の扉を閉めて施錠して、門から次の庭まで通じるはずのバラのアーチの前に立ち、考えこんでいました。
レオとトマスもローズの横に並んで立ち、ツルが絡み合って、行く道が塞がった茂みの隙間のわずかな明かりの先を覗きこみました。
「ローズ、何でアーチが塞がってるの?誰かが屋敷の入口を塞いでるの?」
レオは、この先、危険な何かが待ち受けている予感がして尋ねました。
「私達、妖精は空を飛んで移動してるでしょ、門から歩いて屋敷へ入るなんて、めったにないの。いつの間にかバラのツルが生い茂ってしまって……。」
ローズはバラの茂みを見上げ…
「庭師のジョンが居る頃は、きれいなアーチだったの。屋敷が妖精屋敷へ変貌すると、ジョンは気が狂ったように、ギャーッと悲鳴を上げて、屋敷から姿を消したの」
「……。」
「……。」
レオとトマスは一瞬、言葉を失い、目を丸くしてローズを見つめました。
「こっ、この、トッ、トゲ茂みの中へ?」
「やっぱ…、僕、無理」
「ハハハ、大丈夫よ!私が通り道をつくってあげるわ。私の後からついてきて!妖精のほとんどが館の上空付近に居るのよ。この辺りは大丈夫だってば!」
「大丈夫なことないでしょ」
「そうだよ!レオの家族や伯父さん夫婦、それにメイドも屋敷のどこかに捕らわれてるんだよ」
「ふたりとも、ゾンビ(注)みたいな顔をして…。あっ、あのー、いつからレオとトマス友達なの?」
ローズは、ふたりの気持ちを和らげようとして話題を変え、にこにこ笑いながら尋ねました。
「あっ、あー、小学校の頃、園芸の時間に知り合ったんだ。ふたりともクラスは違ったんだけど、園芸の時間だけは席が隣り合わせだったんだ」
レオは、白いバラの横にこんもりと咲いた紫色のタピアンの花を見つめ、「トマス、一度も花の水やりを忘れたことなくてさ、トマスの植えた花は、誰のよりも大きくて鮮やかだった。トマスって走るのも遅いし、のろまだけど繊細で優しいとこあるなーって思ってさ」
「何だよ!レオは今までずっと、僕の事のろまだって思ってたんだ」
「まっ、まあまあ、そんな深い意味はないよ」
「レオは、そそっかしいとこありそうだしさ、ちょうどいいんじゃない。ハハハ」
「そ、そういうローズは、勇ましい騎士みたいじゃない」
「えっ、それって男の子みたいだって言ってるの?失礼しちゃうわ」
「ハハハハ」「ハハハ」「ハハハハ」
「さあ、じゃあ、そろそろ私いくわね」
ローズは、アーチの中央に立ち、ツルを左右に広げ、すいすいと屋敷の中へ入っていきました。
「ね、ねぇ、レオ」
「何だよ!でもさ、やっぱり屋敷の中は空気が違うよ。花の香りがして幻想的というかさ…。」
「ほ、ほら、ローズの足、見てよ!青くなってるよ。白バラを、ほったらかしにして肥料もやってないだろ、白バラはローズの体から養分を吸い取ろうとしてるんだよ。ほら、もうローズは感覚を失って、トゲにささっても痛くないみたいだよ」
「バカだな!ローズは妖精だぞ!トゲにささらないようにして歩いているんだよ。それに青く見えるのは、葉っぱの影の色さ。屋敷の主人を白バラが襲うわけないだろ!おまえ、深く考えすぎるとこあるからな」
レオとトマスがアーチの入り口で、ひそひそ話していると、「何、ぶつぶつ言ってるの?」ローズがいきなり振り返りました。
「うわっ!」
「ロ、ローズ、顔が緑色だよ!」
「あー、これ?ハハハ、葉っぱの色が、うつっているのよ。私の肌は周囲の色に染まりやすいの。そんな事より、早く!何してんのよ!道が閉ざされても知らないわよ!」
「あー今いく!トマス、ローズの歩いた後をついていくぞ!」
「う、うん」レオとトマスは、ローズの歩いた後に出来た妖精の通り道を辿って、ゆっくり一歩、二歩と、進んでいきました。が…、だんだんローズとの距離が離れ…、前方にローズの姿が見えなくなって…、レオとトマスは、急に慌てて歩きはじめました。
「いっ、痛っ!道が塞がれてしまったよ!トマス!ずるいぞ!後ろからついてくるなんて!こっちはトゲにささって大変なんだぞ!」
トマスは、レオの後ろに、ぴったりと張り付いてレオのズボンのベルトを掴み、ガタガタ震えていました。
「あー、いっ、痛っ!もう体中トゲにさされて、これ以上進めない!」
そう、レオが叫んだ後、トマスが「レオ、ローズは、もう、ずーっと先へいってしまったのかな?」と、ぼそっと言いました。
次号へ続く〜お楽しみに
(注釈1)ゾンビ
ゾンビとはもともと神や精霊、とらえどころがないものを表す言葉。
好きな音楽を聴きながら読む芸術童話。クリスマス、バースデープレゼントにもどうぞ。カントリーファンに贈るヨーロッパを舞台とした、かわいい伽話。幸せを呼ぶ不思議な妖精プルグリムの世界へ行って主人公マーガレットと一緒に、物語を冒険しましょう。

☆内容・挿し絵に感動されて、大阪日日新聞さん、宮崎日日新聞さんに取り上げていただきました。
http://www.bungeisha.co.jp/bookinfo/detail/4-8355-8095-8.jsp